被告が,原告らの法人税について超過額の損金算入を否認して,更正及び過少申告加算税賦課決定等の処分 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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被告が,原告らの法人税について超過額の損金算入を否認して,更正及び過少申告加算税賦課決定等の処分を,また,原告らの源泉徴収に係る所得税について,右超過額を所得税の源泉徴収の対象となる給与等にあたるものと認めて納税告知及び不納付加算税賦課決定等の処分をしたことに対して,原告らが,右処分の取消を求めた事案

 

 

法人税賦課処分等取消請求事件

【事件番号】      宮崎地方裁判所/平成10年(行ウ)第6号

【判決日付】      平成12年11月27日

【判示事項】      被告が,原告らの法人税について超過額の損金算入を否認して,更正及び過少申告加算税賦課決定等の処分を,また,原告らの源泉徴収に係る所得税について,右超過額を所得税の源泉徴収の対象となる給与等にあたるものと認めて納税告知及び不納付加算税賦課決定等の処分をしたことに対して,原告らが,右処分の取消を求めた事案で,判決は,法人税法34条1項の規定により,過大な役員報酬を損金に算入することを否認した法人税に係る更正等の処分はいずれも適法であり,原告らは源泉所得税を徴収し納付すべき義務を負い,同金額の源泉所得税の納付を告知した本件各納税告知は適法であるとして,原告らの請求を棄却した事例

【判決要旨】      (1) 会社の代表取締役等の役員が会社の債務について保証を行なう場合は、その対価として会社から支払われる保証料については、本来、会社と当該役員との間の合意により、商法等に定める手続きを行ったうえで、その金額等の内容を自由に決定しえるものであるが、法人税の課税の局面で、右保証料をその多寡に関わらず総て損金に算入することを認める場合には、保証料の額の操作により会社が自由に利益を減少させることが可能となるうえ、法人税法上損金算入に制限のある役員に対する報酬を保証料の名目により支払い、右制限を事実上無意味にする結果を容易に実現することができることになるから、公正処理基準の観点から、損金に算入できる保証料額は、諸般の事情に照らし社会通念の許容する合理的な範囲内の金額に限られると解することが相当である。

             (2) 会社の代表取締役等の役員が会社の債務について保証を行なうのは、役員の信用力の提供自体を期待するものでなく、経営責任を明確化することを目的とし、役員側においては、保証の引受自体によって利益を得ることを目的とするものではなく、職務上会社の利益のために保証を引き受けているのであって、営利を目的として行なわれる民間の保証会社の保証とは著しい相異があるから、適正な保証料額の決定にあたって民間の保証会社の保証料を参考にすることは相当でない。

             (3) 信用保証協会の保証制度は、その設立の趣旨・目的から利益を得ることを予定していないことから、会社の代表取締役等の役員が会社の債務について保証を行なう場合と営利を目的としない性質の保証である点で共通している信用保証協会の保証料の算出基準を参考として定めた基準(保証する債務額の年利率一パーセントを上限とする)により算出される金額を上限とするのが相当であり、保証料のうち、同額の範囲内は、保証委託の費用(法人税法二二条三項)として損金に算入することができるが、これを超える金額は、右費用としては損金に算入することができないことになる。

             (4) 省略

             (5) 平成五年五月ないし平成六年三月分の源泉所得税の納税告知の適法性は、右期間に納税告知に係る源泉所得税の対象となる給与等の支払の事実があったかどうかによって決定されるべきものであって、平成六年三月期の法人税の更正及びその取消しによって、本件保証料に関する原告らの行為計算が否認されたこと、及び、その後、否認されないことになったことは、その役員に対する所得税の課税関係に何ら影響を及ぼすものでない。

              原告会社らに対する平成六年三月期の法人税の更正の取消しは、当該更正が、いずれも国税通則法七〇条一項に規定する期間を経過した後になされた処分であるという手続上の瑕疵を理由とするものであり、同期間において原告会社らが当該役員に対し保証料名目で支払った金員のうち本件否認部分が役員報酬にあたるとする課税庁の認定が誤りであることを認めたわけではないから、課税庁が、所得税の課税関係において右否認部分を役員報酬にあたると認定することは、右更正の取消しと何ら矛盾しない。

【掲載誌】        税務訴訟資料249号731頁

 

 

法人税法

第二目 資産の評価損

第三十三条 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

3 内国法人がその有する資産につき更生計画認可の決定があつたことにより会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定に従つて行う評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、第一項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

4 内国法人について再生計画認可の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人がその有する資産の価額につき政令で定める評定を行つているときは、その資産(評価損の計上に適しないものとして政令で定めるものを除く。)の評価損の額として政令で定める金額は、第一項の規定にかかわらず、これらの事実が生じた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

5 前三項の内国法人がこれらの内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人で政令で定めるものの株式又は出資を有する場合における当該株式又は出資及びこれらの規定の内国法人が通算法人である場合におけるこれらの内国法人が有する他の通算法人(第六十四条の五(損益通算)の規定の適用を受けない法人として政令で定める法人及び通算親法人を除く。)の株式又は出資については、前三項の規定は、適用しない。

6 第一項の規定の適用があつた場合において、同項の評価換えにより減額された金額を損金の額に算入されなかつた資産については、その評価換えをした日の属する事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上、当該資産の帳簿価額は、その減額がされなかつたものとみなす。

7 第四項の規定は、確定申告書に同項に規定する評価損の額として政令で定める金額の損金算入に関する明細(次項において「評価損明細」という。)の記載があり、かつ、財務省令で定める書類(次項において「評価損関係書類」という。)の添付がある場合(第二十五条第三項(資産の評価益)に規定する資産につき同項に規定する評価益の額として政令で定める金額がある場合(次項において「評価益がある場合」という。)には、同条第六項に規定する評価益明細(次項において「評価益明細」という。)の記載及び同条第六項に規定する評価益関係書類(次項において「評価益関係書類」という。)の添付がある場合に限る。)に限り、適用する。

8 税務署長は、評価損明細(評価益がある場合には、評価損明細又は評価益明細)の記載又は評価損関係書類(評価益がある場合には、評価損関係書類又は評価益関係書類)の添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、当該記載又は当該添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第四項の規定を適用することができる。

9 前三項に定めるもののほか、第一項から第五項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。