発明につき、人の行為により実現される要素が含まれ、人の精神活動が必要となるものであっても、人の精 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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発明につき、人の行為により実現される要素が含まれ、人の精神活動が必要となるものであっても、人の精神活動を支援するための技術的手段を提供するものであり、特許法二条一項にいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものとして、同項の「発明」に該当しないとした審決が取り消された事例

 

 

審決取消請求事件

【事件番号】      知的財産高等裁判所判決/平成19年(行ケ)第10369号

【判決日付】      平成20年6月24日

【判示事項】      発明につき、人の行為により実現される要素が含まれ、人の精神活動が必要となるものであっても、人の精神活動を支援するための技術的手段を提供するものであり、特許法二条一項にいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものとして、同項の「発明」に該当しないとした審決が取り消された事例

【参照条文】      特許法2-1

【掲載誌】        判例時報2026号123頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      発明105巻10号50頁

             ビジネスロー・ジャーナル5号110頁

 

特許法

(定義)

第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為

三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

4 この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

 

 

       主   文

 

 1 特許庁が不服2005-7446号事件について平成19年6月19日にした審決を取り消す。

 2 訴訟費用は被告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

 第1 請求

 主文と同旨。

 第2 事案の概要

 本件は,米国法人である原告が,「双方向歯科治療ネットワーク」とする名称の発明につき特許出願したところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,特許庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。

 争点は,①特許請求の範囲の補正の許否,②本願発明が,特許法29条1項柱書にいう「発明」に該当するかどうか,である。

 1 特許庁における手続の経緯

 原告は,1998年(平成10年)11月3日,同月19日及び1999年(平成11年)2月18日の各優先権(米国)を主張し,同年10月4日,名称を「双方向歯科治療ネットワーク」とする発明について国際出願(PCT/US99/22857。特願2000-579144号)をし(甲11。国内公表は平成14年9月3日。特表2002-528832号),平成12年7月3日に日本国特許庁に翻訳文を提出したが(甲1),平成17年1月21日に拒絶査定を受けたので(甲5),不服の審判請求をした(甲6)。

 特許庁は同請求を不服2005-7446号事件として審理し,その手続中で原告は,平成17年5月26日付けで特許請求の範囲を変更する補正(以下「本件補正」という。)をしたが(甲7,8),特許庁は,平成19年6月19日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決を行い,その謄本は,同月29日に原告に送達された。

 なお,出訴期間として90日が附加された。