オウブンシャホールディング事件・親会社が子会社に新株の有利発行をさせて親会社の保有する子会社株式 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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オウブンシャホールディング事件・親会社が子会社に新株の有利発行をさせて親会社の保有する子会社株式に表章された資産価値を上記発行を受けた関連会社に移転させたことが親会社の益金の額の計算において法人税法22条2項にいう取引に当たるとされた事例


    法人税更正処分等取消請求事件
【事件番号】    最高裁判所第3小法廷判決/平成16年(行ヒ)第128号
【判決日付】    平成18年1月24日
【判示事項】    親会社が子会社に新株の有利発行をさせて親会社の保有する子会社株式に表章された資産価値を上記発行を受けた関連会社に移転させたことが親会社の益金の額の計算において法人税法22条2項にいう取引に当たるとされた事例
【判決要旨】    A社の唯一の株主であるⅩ社が,A社にその発行済株式総数の15倍の新株を著しく有利な価額で関連会社B社に割り当てる発行をさせ,Ⅹ社のA社に対する持株割合を16分の1に減少させ,B社のA社に対する持株割合を16分の15とすることにより,Ⅹ社の保有するA社株式に表章された資産価値の相当部分(A社の増資前の資産価値と増資後の資産価値の16分の1との差額)をB社に移転させた場合において,Ⅹ社が上記新株発行により上記資産価値を対価を得ることなくB社に移転させることを意図したこと,Ⅹ社の筆頭株主である財団法人CがB社の唯一の株主であり,Ⅹ社,A社,B社及び財団法人Cの各役員が意思を相通じて上記新株発行を行ったこと,B社が上記意図を十分に了解した上で上記資産価値の移転を受けたことなど判示の事実関係の下では,上記資産価値の移転は,Ⅹ社の益金の額の計算において法人税法22条2項にいう取引に当たる。
【参照条文】    法人税法22-2
【掲載誌】     訟務月報53巻10号2946頁
          最高裁判所裁判集民事219号285頁
          裁判所時報1404号94頁
          判例タイムズ1203号108頁
          判例時報1923号20頁
          税務訴訟資料256号順号10279

法人税法
第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則
第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。
5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。