東京都下の市内を貫く幅36メートルの幹線道路(府中所沢線)を新設する都市計画事業の認可に | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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東京都下の市内を貫く幅36メートルの幹線道路(府中所沢線)を新設する都市計画事業の認可について,事業地内等に居住する住民が,道路の必要性や公共性の不存在,大気汚染の激化,騒音・振動被害の発生,住民に対する説明義務違反等を主張して,その取消を求めた事案

 

東京地方裁判所判決/平成19年(行ウ)第770号

平成23年3月29日

都市計画道路事業認可取消請求事件

【判示事項】    都下の市内を貫く幅36メートルの幹線道路(府中所沢線)を新設する都市計画事業の認可について,事業地内等に居住する住民が,道路の必要性や公共性の不存在,大気汚染の激化,騒音・振動被害の発生,住民に対する説明義務違反等を主張して,その取消を求めた事案。

裁判所は,関係地外に居住する原告らは,本件事業の実施により大気汚染,騒音等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受ける恐れがあるとは言えないとして,原告適格を否定して訴えを却下し,本件事業認可について,その必要性や各種被害等の主張に対し,いずれも裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用に当たらないとして,その余の原告に対し,請求を棄却した事例

【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

 

 

       主   文

 1 本件訴えのうち別紙1「当事者目録」の[原告]記載3の原告らの請求に係る部分をいずれも却下する。

 2 別紙1「当事者目録」の[原告]記載3及び4の原告らを除くその余の原告らの請求をいずれも棄却する。

 3 1項及び前項に関する訴訟費用のうち補助参加によって生じたもの以外のものは,別紙1「当事者目録」の[原告]記載1ないし3の原告らの,そのうち補助参加によって生じたものは別紙1「当事者目録」の[原告ら補助参加人]記載の補助参加人らの各負担とする。

 4 本件訴えのうち別紙1「当事者目録」の[原告]記載4の原告らの請求に係る部分は,別紙2「死亡者目録」記載の日に,同原告らの死亡により,いずれも終了した。

       事実及び理由

第1 請求

   関東地方整備局長が平成19年11月26日付けで参加人に対してした国分寺都市計画道路事業3・2・8号府中所沢線の都市計画事業の認可(国関整計管認東第11号)を取り消す。

第2 事案の概要

   本件は,国土交通大臣から権限の委任を受けた関東地方整備局長が,国分寺都市計画道路(以下「本件都市計画」という。)中の3・2・8号府中所沢線(以下「本件都市計画道路」という。)のうち,施行者である参加人が申請した東京都府中市(以下「府中市」という。)武蔵台3丁目を起点とし東京都国分寺市(以下「国分寺市」という。)東戸倉2丁目を終点とする区間(以下「本件事業区間」という。)に幅員36.0m(標準)とし延長2530mとする道路(以下「本件道路」という。)を新設することを内容とする都市計画事業(国分寺都市計画道路事業3・2・8号府中所沢線。以下「本件事業」という。)の認可(以下「本件事業認可」という。)をしたことについて,本件事業の事業地内又はその付近の住民である原告らが,本件事業認可やその前提となる本件都市計画に関して,本件道路の必要性や公共性が存在しないこと,本件道路が大気の汚染を激化させ,騒音被害を発生させるものであること,住民に対する説明義務を怠ったことなどの違法があると主張し,本件事業認可の取消しを求めた事案である。

 1 関係法令の定め

   別紙3「関係法令の定め」に記載したとおりである(同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。

 2 前提事実(争いのない事実及び文中記載の証拠等により認定した事実)

  (1) 原告等

   ア 別紙1「当事者目録」の[原告]記載1の原告ら(以下「第1原告ら」という。)は,いずれも,本件事業の事業地内の不動産について所有権等の権利を有して上記の事業地内に居住している者である。

   イ 別紙1「当事者目録」の[原告]記載2の原告ら(以下「第2原告ら」という。)は,いずれも,後記(3)ケのとおり本件事業に係る本件条例の事業段階関係地域とみなされた別紙4の地域(以下「本件関係地域」という。)内に居住する者である。

   ウ 別紙1「当事者目録」の[原告]記載3の原告ら(以下「第3原告ら」といい,原告X1を「原告X1」といい,原告X2を「原告X2」といいい,原告X3を「原告X3」という。)は,いずれも,本件関係地域外に居住する者である。

   エ 別紙1「当事者目録」の[原告]記載4の原告ら(以下「第4原告ら」という。)は,いずれも,本件訴えの提起の当時,本件関係地域内に居住していた者であるが,それぞれ,別紙2「死亡者目録」の死亡日記載の日に死亡した。

  (2) 本件都市計画道路に係る都市計画の経緯

   ア 昭和18年(乙3)

     内務大臣は,旧都市計画法(大正8年法律第36号。以下「旧都市計画法」という。)3条に基づき,立川都市計画街路の決定(以下「昭和18年決定」という。)をし,昭和18年8月4日付けで,これの告示(内務省告示第530号)をし,縦覧に供した。昭和18年決定のうち本件都市計画道路に係る部分(街路番号は2等大路第2類第3号である。)については,国分寺町大字内藤新田を起点とし,同町大字戸倉新田を終点として,幅員を15mとするものである。

   イ 昭和36年(乙4,5)

     建設大臣は,旧都市計画法3条に基づき,立川都市計画街路の決定及び廃止(以下「昭和36年決定」という。)をし,昭和36年10月5日付けで,これの告示(建設省告示第2295号)をし,縦覧に供した。昭和36年決定のうち本件都市計画道路に係る部分については,街路番号の変更(変更後の街路番号は2等大路第2類第22号である。)をした上で,昭和18年決定はなお効力を有するとするものである。

   ウ 昭和37年(乙6,7)

     建設大臣は,旧都市計画法3条に基づき,立川都市計画街路の追加,変更及び廃止(以下「昭和37年決定」という。)をし,昭和37年6月19日付けで,これの告示(建設省告示第1422号)をし,縦覧に供した。昭和37年決定のうち本件都市計画道路に係る部分は,街路番号の変更(変更後の街路番号は1等大路第3類第3号である。)をし,街路名称を府中所沢線とし,府中市武蔵台を起点とし,国分寺町大字戸倉新田を終点とし,府中市武蔵台を主要経過地とし,幅員を28mとし,延長を約2570mとするものである。

   エ 昭和40年(乙8,9)

     建設大臣は,旧都市計画法3条に基づき,本件都市計画道路を含む国分寺都市計画街路の決定(以下「昭和40年決定」という。なお,昭和40年決定は,都市計画法施行法2条に基づき,都市計画法(昭和43年法律第100号。昭和44年6月14日施行)の規定による相当の都市計画とみなすものとされた。)をし,昭和40年4月13日付けで,これの告示(建設省告示第1273号)をし,縦覧に供した。昭和40年決定のうち本件都市計画道路に係る部分は,街路番号の変更(変更後の街路番号は1等大路第3類第1号である。)をし,街路名称を府中所沢線とし,府中市武蔵台2丁目13番地を起点とし,国分寺町大字戸倉新田字窪東128番地を終点とし,同町大字内藤新田字久保192番地を主な経過地とし,幅員を36~28mとし,延長を約2570mとするものである。

   オ 平成元年(乙10,11)

     参加人は,都市計画法21条2項(平成2年法律第61号による改正前のもの)において準用する同法18条1項(平成11年法律第87号による改正前のもの)の規定に基づき,国分寺都市計画道路の名称の変更(以下「平成元年決定」という。)をし,平成元年6月16日付けで,これの告示(東京都告示第672号)をし,公衆の縦覧に供した。平成元年決定により,本件都市計画道路の名称については3・3・8号府中所沢線に変更された。

   カ 平成18年(乙12,13)

     参加人は,以下の手続を経て,都市計画法21条2項(平成18年法律第46号による改正前のもの。以下同じ。)において準用する同法18条1項に基づき,国分寺都市計画道路の変更(以下「平成18年決定」という。)をし,平成18年8月22日付けで,同法21条2項において準用する同法20条1項及び2項の規定に基づき,これの告示(東京都告示第1221号)をし,公衆の縦覧に供した。平成18年決定の概要は,①国分寺都市計画道路のうち本件都市計画道路の名称を「3・2・8号府中所沢線」に変更し,②幅員を一部の41m又は43mとする部分を除き36mに変更し,③府中市武蔵台3丁目から国分寺市東戸倉2丁目までの区間(延長約2570m)に幅員10mの環境施設帯を設置し,④車線の数を4車線に決定するというものである。

    (平成18年決定の手続)

    (ア) 参加人は,平成18年4月17日,都市計画法21条2項において準用する同法18条1項の規定に基づき,関係市である国分寺市及び府中市に対し,平成18年決定の案について意見を照会し,同年7月5日,府中市長から意見はない旨の回答を,同月11日,国分寺市長から案のとおり了承する旨の回答を,それぞれ得た。(乙15の1,16の1~4)

    (イ) 参加人は,平成18年5月24日,都市計画法23条6項の規定に基づき,本件都市計画道路を管理することとなる東京都知事(以下「都知事」という。)に平成18年決定の案について協議し,同年7月7日,都知事から本件都市計画道路を都道として管理する旨の回答を得た。

     (乙15の1,18の1及び2)

    (ウ) 参加人は,平成18年6月2日,都市計画法21条2項において準用する同法17条1項の規定に基づき,平成18年決定をしようとする旨を公告し,その案を,当該決定をしようとする理由を記載した書面を添えて,同日から同月16日までの2週間,東京都庁,府中市役所及び国分寺市役所において公衆の縦覧に供した。(乙14の1~5,15の1,弁論の全趣旨)

    (エ) 参加人は,前記(ウ)の縦覧期間満了の日までに,関係市の住民及び利害関係人から都市計画法21条2項において準用する同法17条2項の規定に基づく意見書(反対意見)1通の提出を受けた。(乙15の1,弁論の全趣旨)

    (オ) 参加人は,平成18年7月18日付けで,都市計画法21条2項において準用する同法18条1項の規定に基づき,平成18年決定の案を東京都都市計画審議会に付議し,同審議会は,同月28日付けで,上記の案のとおり議決した。(乙17の1及び2)

    (カ) 参加人は,平成18年8月2日付けで,都市計画法21条2項において準用する同法18条3項の規定に基づき,平成18年決定の案について,国土交通大臣から権限の委任を受けた関東地方整備局長に協議し,同月7日付けで同局長の同意を得た。(乙15の1~3)

    (キ) なお,平成16年11月17日から19日までの間並びに平成18年2月15日から17日までの間,各日1回,関係市の住民に対し,平成18年決定の素案について説明会が開催された。(乙15の1,20の1~3,21)

   キ 本件都市計画道路の概要

     平成18年決定後の本件都市計画道路(国分寺都市計画道路3・2・8号府中所沢線)の概要は,以下のとおりであり,その位置関係は,別紙5のとおりである。

    (ア) 種別       幹線街路

    (イ) 名称 番号    3・2・8

           路線名   府中所沢線

    (ウ) 位置 起点    府中市武蔵台3丁目

           終点    国分寺市東戸倉2丁目

           主な経過地 国分寺市日吉町4丁目

    (エ) 区域 延長    約2570m

    (オ) 構造 構造形式  地表式

           車線の数  4車線

           幅員    36mないし43m

           地表式の区間における鉄道等との交差の構造

                 JR中央線と立体交差1か所

                 西武鉄道国分寺線と立体交差1か所

                 幹線街路3・4・10号線と立体交差1か所

                 幹線街路と平面交差3か所