平和条約第14条(a)項2(1)による在外資産の喪失と国に対する補償請求の許否
補償金請求事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和40年(オ)第417号
【判決日付】 昭和43年11月27日
【判示事項】 平和条約第14条(a)項2(1)による在外資産の喪失と国に対する補償請求の許否
【判決要旨】 平和条約が締結された結果、同条約第14条(a)項2(1)の規定により在外資産を喪失した者は、国に対しその喪失による損害について補償を請求することはできない。
【参照条文】 日本国との平和条約14条(a)項2(1)
憲法29-3
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集22巻12号2808頁
日本国との平和条約
第十四条
広議の賠償に関する規定である。
⒜ 日本が連合国に賠償を支払うべきものであることは承認されるが、同時に、日本の資󠄄源をもつてしては、現在完全な賠償支払と他の債務の履行をあわせて行うものとすれば、日本はとうていその経済を維持することができないことも承認されている。そこで、
1 第一に、現在の領域が日本国軍隊によつて占領され、且つ、日本国によつて損害を与えられた連合国から希望があるときには、日本人の役務を提供することによつて償いをするものとし、そのための取極を締結するための交󠄄渉をすみやかに開始しなければならない。役務を提供すべき作業の例として生産と沈船引揚げが挙げられている。この取極の内容について、二つの条件が付けられている。第一は、他の連合国に迷惑をかけてはならない、ということである。例えば、日本がその取極によつて賠償を支払う結果、他の連合国が日本に与える経済上の援助の額を増さなければならない、とふうようなことがあつてはならない。第二は、役務の内容が原材料からの製造である場合には、日本に外貨の負担を課さないために、その原材料は、その製造を要求する連合国が供給しなければならないということである。
2 前項1は、狭義のいわゆる賠償であるが、第二種の賠償として、日本の在連合国財産は、連合国の処分にゆだねられる。日本の国家及び国民、それらの代理者又󠄂は代行者、並びにそれらが所有し又󠄂は支配した団体に俗する財産が対象となる。その留置、清算及󠄃び処分は、連合国の国内法に従つて行われる((Ⅳ)参照)。ただし、処分から除外される日本財産がある。すなわち、㈠日本に占領されなかつた地域に当該国の許可を得て戦争中に居住した日本人個人の財産、同大公使󠄃館、領事館及󠄃びその職員の財産、㈢宗教団体又󠄂は慈善団体の財産、㈣終戦後の正常な取引に基いて得た財産、㈤日本国若しくは日本国民の債務で円貨表示のものがこれである((Ⅱ)参照)。これらの財産の返還を受けるためには、保管及󠄃び管理のための費用を支払わなければならない((Ⅲ)参照)。なお、一般の財産、権利及び利益とことなり、特に日本の商標及󠄃び著作権については、連合国でなるべく有利な取扱いをすることになつている((V)参照)。
⒝ 前項⒜の日本の賠償義務に対応して、本項は、連合国が、この平和条約中で特に規定されているものを除いて、㈠すべての賠償請求権、㈡戦争遂行中に日本及び日本国民がとつた行動から生ずる連合目及󠄃び連合国民の他の請求権並びに、㈢占領の直接軍事費に関する請求権を放棄する旨を規定する。直接占領軍事費とあるのは、占領期間中の経済援助費等を含まない意味である。
平成三年法律第七十一号
日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法
(特別永住許可)
第四条 平和条約国籍離脱者の子孫で出生その他の事由により入管法第三章に規定する上陸の手続を経ることなく本邦に在留することとなるものは、出入国在留管理庁長官の許可を受けて、この法律に定める特別永住者として、本邦で永住することができる。
2 出入国在留管理庁長官は、前項に規定する者が、当該出生その他の事由が生じた日から六十日以内に同項の許可の申請をしたときは、これを許可するものとする。
3 第一項の許可の申請は、法務省令で定めるところにより、居住地の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下同じ。)の長に、特別永住許可申請書その他の書類を提出して行わなければならない。
4 市町村の長は、前項の書類の提出があったときは、第一項の許可を受けようとする者が申請に係る居住地に居住しているかどうか、及び提出された書類の成立が真正であるかどうかを審査した上、これらの書類を、出入国在留管理庁長官に送付しなければならない。