登記名義人が当該登記の抹消登記手続を求めることが許されるとされた事例
所有権移転登記抹消登記手続等請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和33年(オ)第1128号
【判決日付】 昭和36年11月24日
【判示事項】 登記名義人が当該登記の抹消登記手続を求めることが許されるとされた事例
【判決要旨】 甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。
【参照条文】 不動産登記法26-1
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集15巻10号2573頁
不動産登記法
(登記の抹消)
第六十八条 権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人加藤定蔵の上告理由第一点について。
真実の権利関係に合致しない登記があるときは、その登記の当事者の一方は他の当事者に対し、いずれも登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請求権を有するとともに、他の当事者は右登記請求に応じて登記を真実に合致せしめることに協力する義務を負うものというべきである。本件において、被上告人は上告人からその所有にかかる本件宅地を買い受けその旨の所有権取得登記を経由したが、上告人において売買契約の条件を履行しないためこれを解除したことを理由として、右登記の抹消登記手続を求めるものであるから、上告人は之に対応して右抹消の登記に協力する義務ある旨の原審の判断は、前判示に照して正当である。論旨は、ひつきよう独自の見解にもとづき原判決を論難するものであつて、その引用する判例はいずれも本件に適切でないから、採用するをえない。
同第二点について。
所論は、審理不尽、理由不備をいうけれども、原審において主張、判断のない事項について違法をいうにすぎないから、採用するをえない。
同第三点について。
所論は、採証法則違背、理由不備をいうけれども、ひつきよう原審が適法にした証拠の取捨、判断及び事実認定を非難するにすぎず、上告適法の理由とならない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷