1 住民基本台帳法に基づく住民基本台帳ネットワークシステムと憲法13条 2 住民基本台帳法に基づ | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属

1 住民基本台帳法に基づく住民基本台帳ネットワークシステムと憲法13条

2 住民基本台帳法に基づく住民基本台帳ネットワークシステムが,プライバシーを侵害するものとして憲法13条に違反し,個人情報の漏えいの危険性がある点で住民基本台帳法36条の2等に反するとして,地方自治法242条の2第1項1号及び4号に基づき,名古屋市長に対してされた,住民基本台帳カードの交付に関して公金を支出することの差止め及び支出した公金相当額の損害賠償を市長個人に対して請求するよう求める各請求が,いずれも棄却された事例

 

名古屋高等裁判所判決/平成17年(行コ)第39号

平成18年4月19日

支出差止等請求控訴事件

名古屋市事件

【判示事項】    1 住民基本台帳法に基づく住民基本台帳ネットワークシステムと憲法13条

2 住民基本台帳法に基づく住民基本台帳ネットワークシステムが,プライバシーを侵害するものとして憲法13条に違反し,個人情報の漏えいの危険性がある点で住民基本台帳法36条の2等に反するとして,地方自治法242条の2第1項1号及び4号に基づき,市長に対してされた,住民基本台帳カードの交付に関して公金を支出することの差止め及び支出した公金相当額の損害賠償を市長個人に対して請求するよう求める各請求が,いずれも棄却された事例

【判決要旨】    1 住民基本台帳法に基づく住民基本台帳ネットワークシステムによって都道府県知事及び指定情報処理機関が取得し,国,行政機関,都道府県及び市町村に提供する個人情報は,氏名,生年月日,性別,住所に11けたの数字からなる住民票コードを加えた本人確認情報に限られるところ,国及び地方公共団体による本人確認情報の利用目的は正当なものであって,その取得の態様は社会通念上相当であると認めることができ,また,前記システムの対象となる情報は原則として個人の人格的自律に直接関わらない客観的,外形的事項に関するものにとどまり,かつ,これを提供,利用できる事務は法定されて,それ以外の提供,利用が禁止されている上,国や地方公共団体は,同法の規定する事務の遂行のため必要がある場合を除いては,何人に対しても,住民票コードを告知することを求めてはならないとされていることなどに照らせば,住民票コードを前提とする前記システム本体に関する規定及びこれと不可分一体の住民基本カードに関する規定は憲法13条に違反しない。

2 住民基本台帳法に基づく住民基本台帳ネットワークシステムが,プライバシーを侵害するものとして憲法13条に違反し,個人情報の漏えいの危険性がある点で住民基本台帳法36条の2及び住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成11年法律第133号)附則1条2項の趣旨に反するとして,地方自治法242条の2第1項1号及び4号に基づき,市長に対してされた,住民基本台帳カードの交付に関して公金を支出することの差止め及び支出した公金相当額の損害賠償を市長個人に対して請求するよう求める各請求につき,同システムは,その利用目的が正当であり,同システム及び個人情報が記録された住民基本カードには,個人情報の漏えいを防ぐための対策が十分に施されていて,その危険性が高いとはいえないから,憲法13条及び前記法令に違反することはないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

住民基本台帳法

(住民票に記載されている事項の安全確保等)

第三十六条の二 市町村長は、住民基本台帳又は戸籍の附票に関する事務の処理に当たつては、住民票、除票、戸籍の附票又は戸籍の附票の除票に記載されている事項の漏えい、滅失及び毀損の防止その他の住民票、除票、戸籍の附票又は戸籍の附票の除票に記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。

2 前項の規定は、市町村長から住民基本台帳又は戸籍の附票に関する事務の処理の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けた者が受託した業務を行う場合について準用する。

 

地方自治法

(住民訴訟)

第二百四十二条の二 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。

一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求

二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求

三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求

四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求

2 前項の規定による訴訟は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める期間内に提起しなければならない。

一 監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合 当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から三十日以内

二 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合 当該措置に係る監査委員の通知があつた日から三十日以内

三 監査委員が請求をした日から六十日を経過しても監査又は勧告を行わない場合 当該六十日を経過した日から三十日以内

四 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合 当該勧告に示された期間を経過した日から三十日以内

3 前項の期間は、不変期間とする。

4 第一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもつて同一の請求をすることができない。

5 第一項の規定による訴訟は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。

6 第一項第一号の規定による請求に基づく差止めは、当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない。

7 第一項第四号の規定による訴訟が提起された場合には、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実の相手方に対して、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならない。

8 前項の訴訟告知があつたときは、第一項第四号の規定による訴訟が終了した日から六月を経過するまでの間は、当該訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権の時効は、完成しない。

9 民法第百五十三条第二項の規定は、前項の規定による時効の完成猶予について準用する。

10 第一項に規定する違法な行為又は怠る事実については、民事保全法(平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。

11 第二項から前項までに定めるもののほか、第一項の規定による訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条の規定の適用があるものとする。

12 第一項の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、弁護士、弁護士法人又は弁護士・外国法事務弁護士共同法人に報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。