特定商取引法の令和3年改正その2 第2章 2021年公布の特定商取引法改正 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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第2章 2021年公布の特定商取引法改正

2021年6月9日、「消費者被害の防⽌及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の⼀部を改正する法律」(令和3年法律第72号)が成立し、同月16日に公布されました。

 

この法律によって特商法が改正され、詐欺的な定期購入商法対策の強化、送り付け商法対策の強化、消費者利益の擁護増進のための規定の整備等が図られました。

 

上記改正の大部分は2022年6月1日までに施行されましたが、未施行の部分がありました。それが、「契約書面等の電子化」に関する改正です。

 

 

第3章 2023年6月に施行された改正のポイント

2021年、特定商取引法(略称:特商法)が改正され、順次施行がなされてきました。その最後の仕上げとして2023年6月1日から特定商取引法の施行規則や施行令等(以下、それぞれ「施行規則」・「施行令」と表記します)が改正・整備され、以下の2つに関する点で改正が行われます。

今回は、2023年6月の法改正の内容について詳しく解説しますが、先に、2022年6月での改正内容についても簡単に確認しておきましょう。

 

クーリング・オフ書面の電子化対応

クーリング・オフとは、クーリング・オフ期間中であれば無条件で契約の撤回や解除ができる制度です。

特商法のうち、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入には8日間のクーリング・オフ期間が定められております。

また、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引には20日間のクーリング・オフ期間が定められております。

2022年の法改正前までは、クーリング・オフの通知は、書面により行う必要がございました。

改正により、消費者はメール等の手段を用いてクーリング・オフの通知を電子交付できるようになりました。

 

 

通信販売の規制強化

2022年の改正の二つ目は通信販売における規制強化です。

サブスクに代表される定期購入型のサービスにおける消費者の不利益を防ぐため、通信販売の申込書面やECサイトの注文確認画面における記載事項が定められました。

 

行政処分の強化

また、2022年の改正では、事業者が改正内容に違反した場合における行政処分についても実効性が強化されました。

具体的には、業務停止や業務禁止命令の対象となる役員等の範囲が拡大されております。

 

 

契約書面等の電子化に係る規定が新設

今回の改正により、従来書面での交付が義務づけられていた契約書面等について、電子交付による方法が認められるようになりました。

電子交付を行う際には、消費者からの事前の承諾を得ることや、承諾を得るための手続きおいて詳しく規定されております。

 

契約書面等に対するこれまでの取り扱い

これまでの特商法の規定では、契約書面等において事業者は、消費者に対して書面を交付する義務がございました。

紙での交付が必要であり、メールなどによってデータで送信することは認められておりませんでした。

また。交付が必要な書面を渡さなかった場合や、記載事項に漏れがあったり、虚偽の内容が記載されていた場合などへの罰則についても特商法は定めております。

 

契約書面等に対して改正により可能になること

冒頭でも触れさせていただきましたが、これまで、例えば特定継続的役務提供を行う際に消費者へ渡す必要があった「概要書面」「契約書面」は、消費者からの事前承諾などの一定の要件を満たすことにより、電子交付が可能になりました。

なお。詳しい要件については引き続き消費者庁からガイドライン等が公表される予定です。

 

電子化が可能な書面は3種類

電子化が可能な書面

電子交付が可能となる書面は次の3つです。

3つをまとめて「契約書面等」とします。

 

概要書面

特商法に該当する取引において、取引等の概要について記載した書面をいいます。

連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売において交付が義務付けられております。

 

申込書面

申し込みする内容を記載する書面をいいます。

訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入において、事業者が申し込みを受けた際に交付する義務がございます。

なお、申し込みと同時に契約を締結する場合には交付不要となります。

 

契約書面

契約の内容を明らかにするための書面です。

特商法の取引類型のうち、通信販売を除くすべての取引において交付が義務付けられております。

 

契約書面等を電子化する流れ

契約書面等を電子化するために必要となる手続きと流れについて確認していきましょう。

 

事前の承諾

まず消費者からの承諾が必要となります。

承諾を得る手続きは、電子交付を行う書面ごとに必要となりますので、概要書面・申込書面・契約書面とそれぞれで必要となるという点に注意しましょう。

承諾を得る手続きとしては、提供する種類や内容を提示すること、重要事項の説明、適合性の確認、書面等による承諾の取得と控え書面の交付、と必要な手続きが細かく定められております。

例えば適合性の確認については、消費者が交付されたデータを確認するために使用するパソコン等のOSやツールについて、提供元となるソフトウェアメーカー等のサポートが終了していないことなどを事前に確認できる必要がございます。

 

電磁的な方法による提供

電子交付する際に実施可能な電磁的方法は次のとおりです。

・メール等でのデータの送信による方法

・事業者のウェブサイト等に掲載し、消費者が閲覧できるようにする方法

・USB、CD-Rなどの記録媒体にデータ保存し、同媒体を交付する方法

また、「データを出力して書面に印刷できるものであること」「データの改変が行われていないかを確認できる措置が取られていること」といった適合基準も定められております。

提供するデータにおいても「明瞭に読むことができる」ようにしなければなりません。例えば背景が赤字であるのに赤字の文字で表示するなどは明瞭に読むことができませんので修正が必要です。

 

提供実施の確認

事業者は電子交付によって契約書面等を交付した際に、消費者に対し、提供したデータがきちんと到達しているのかを確認しなければなりません。

その為、事業者側は到達において何かしら記録が残る方法を用意しておく必要がございます。

 

 

書面交付義務においては適切な対応で行われなかった場合の義務違反について刑事罰も含めて規定がされております。