相続税法22条の定める「当該財産の取得の時における時価」を相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付け直資56、直審(資)17国税庁長官通達、平成3年12月18日付け課評2-4課資1-6により「財産評価基本通達」と題名改正、平成2年8月3日付け直評12、直資2-203による改正前)の定める評価方法以外の方法で評価することの可否
贈与税更正処分取消請求控訴事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成7年(行コ)第99号
【判決日付】 平成7年12月13日
【判示事項】 1、相続税法22条の定める「当該財産の取得の時における時価」を相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付け直資56、直審(資)17国税庁長官通達、平成3年12月18日付け課評2-4課資1-6により「財産評価基本通達」と題名改正、平成2年8月3日付け直評12、直資2-203による改正前)の定める評価方法以外の方法で評価することの可否
2、負担付贈与に係る上場株式の時価を証券取引所の公表する課税時期の最終価格と評価してした贈与税の更正処分等の取消請求が、棄却された事例
【判決要旨】 1、相続税法22条の定める「当該財産の取得の時における時価」とは、課税時期においてそれぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立する価格をいうところ、課税実務上は、これを相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付け直資56、直審(資)17国税庁長官通達、平成3年12月18日付け課評2-4課資1-6により「財産評価基本通達」と題名改正、平成2年8月3日付け直評12、直資2-203による改正前)によってあらかじめ定められた評価方法により画一的に評価する取扱いをしており、このような取扱いは、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であり、租税平等主義にかなうというべきであるが、同通達による評価方法を形式的、画一的に適用することによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害し、また、相続税法や同通達の趣旨に反するような結果を招来するような場合には、他の合理的な方法によることが許される。
2、負担付贈与に係る上場株式の時価を証券取引所の公表する課税時期の最終価格と評価してした贈与税の更正処分等の取消請求につき、当該負担付贈与を含む一連の取引は、前記株式の、贈与時点における市場価格と相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付け直資56、直審(資)17国税庁長官通達、平成3年12月18日付け課評2-4課資1-6により「財産評価基本通達」と題名改正、平成2年8月3日付け直評12、直資2-203による改正前)による評価額とのかい離を利用して、専ら贈与税の負担を回避する目的で計画的に行われたものであり、このような取引について同通達を適用することは、株式の市場価格の偶発性を排除し評価の安全を図ろうとする同通達の趣旨に反する上、租税負担の公平を著しく害し相続税法の立法趣旨に反する著しく不相当な結果をもたらすこととなるというべきであるから、同通達の定める評価方法を形式的に適用することなく、上場株式の客観的な市場価格である前記最終価格をもって評価することに合理性があるとして、前記請求を棄却した事例
【参照条文】 相続税法22
相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付け直資56、直審(資)17国税庁長官通達、平成3年12月18日付け課評2-4課資1-6により「財産評価基本通達」と題名改正、平成2年8月3日付け直評12、直資2-203による改正前)169
【掲載誌】 行政事件裁判例集46巻12号1143頁
税務訴訟資料214号757頁
【評釈論文】 税務事例28巻11号17頁
相続税法
(評価の原則)
第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。