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みなす譲渡課税における時価の算定に当たり、公示価格を相続税財産評価基準の路線価で除して得られる「公示価格比準倍率」を用いて算定することの合理性の有無(原審判決引用)

 

 

所得税更正処分取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成3年(行コ)第42号

【判決日付】      平成3年11月21日

【判示事項】      (1) みなす譲渡課税における時価の算定に当たり、公示価格を相続税財産評価基準の路線価で除して得られる「公示価格比準倍率」を用いて算定することの合理性の有無(原審判決引用)

             (2) 本家土地は標準地よりも地理的環境が悪いから、公示価格比準倍率を標準地のうち比準倍率の低い数値を基本として算定すべきであるとの納税者の主張が、公示価格及び相続税路線価はそれを決定するに当たって地理的環境等をも考慮していることは公知の事実であるとして、排斥された事例(原審判決引用)

             (3) みなす譲渡所得金額の算定に当たり、譲渡した土地の一部には、納税者の借地権が設定されていたので、借地権の価額を控除した時価を算定すべきであるとの納税者の主張が、そのような事実はないとして排斥された事例(原審判決引用)

             (4) 公示価格比準倍率は地理的環境の良い物件ほどその倍率が高くなる傾向にあるから、本件土地の時価の算定に当たっては、各標準地の比準倍率の平均値を用いるべきではなく、標準地のうち、本件土地の地理的環境に近い土地の比準倍率を基本とすべきであるとの納税者の主張が、公示価格のみならず路線価もそれぞれの地域の個別的要因を考慮していることから、地理的条件の差異によって倍率が異なるとは断定できないとして、排斥された事例

【判決要旨】      (1) みなす譲渡課税の時価算定について被告税務署長の行った時価認定方法は、譲渡物件の所在する江戸川区平井地域内の全ての地価公示標準地四か所を対象として比準倍率の平均値を算出するというものであるところ、その数値は、右地域内の標準的な比準倍率と考えることができるから、これに基づいて本件土地の時価を算定する方法は一応の合理性を有するものであり、これによって算定された価額は特段の事情がない限り本件土地の時価を上回ることはない。

             (2)~(4) 省略【掲載誌】               税務訴訟資料187号157頁

 

所得税法59条

(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)

第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

 

所得税法施行令169

(時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)

第百六十九条 法第五十九条第一項第二号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額とする。