賃貸人の共同相続人に対して賃借権の確認を求める訴訟と必要的共同訴訟の成否 借地権確認妨害排除 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属

賃貸人の共同相続人に対して賃借権の確認を求める訴訟と必要的共同訴訟の成否

 

 

借地権確認妨害排除請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和45年(オ)第64号

【判決日付】      昭和45年5月22日

【判示事項】      賃貸人の共同相続人に対して賃借権の確認を求める訴訟と必要的共同訴訟の成否

【判決要旨】      不動産の賃借人が賃貸人の相続人に対して賃借権の確認を求める訴訟は、相続人が数人あるときでも、必要的共同訴訟ではない。

【参照条文】      民事訴訟法62

             民法430

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集24巻5号415頁

 

民法

(不可分債務)

第四百三十条 第四款(連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。

 

民事訴訟法

(共同訴訟の要件)

第三十八条 訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。

(共同訴訟人の地位)

第三十九条 共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。

(必要的共同訴訟)

第四十条 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。

2 前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。

3 第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。

4 第三十二条第一項の規定は、第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人が提起した上訴について他の共同訴訟人である被保佐人若しくは被補助人又は他の共同訴訟人の後見人その他の法定代理人のすべき訴訟行為について準用する。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人石丸勘三郎、同石丸九郎の上告理由第一点について。

 不動産賃貸人が死亡し、数名の者が共同してこれを相続した場合には、賃貸物を使用収益させるべき賃貸借契約上の債務を相続人ら各自が不可分に負担し、賃借人は、相続人の一人に対しても右債務の全部の履行を請求することができるものと解すべきである。したがつて、訴をもつて賃借権の確認を求める場合においても、共同相続人のうち争いのある者のみを相手方とすれば足り、争いのない者を相手方とする必要はなく、賃借人から賃貸人の共同相続人に対する賃借権確認の訴は必要的共同訴訟ではないと解するのが相当である。よつて、被上告人が本件土地の賃貸人の共同相続人中上告人Aのみを相手どつて提起した本件訴を適法なものとして、審理判断した原審の措置に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 同第二点ないし第五点について。

 所論の各点の原判決の事実認定は、その拳示する証拠に照らして肯認することができ、その認定した事実関係のもとにおいて、被上告人が本件土地に対する賃借権を取得しているものとした判断は正当であつて、右認定・判断の過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および右事実認定を非難し、さらに、原審で主張しなかつたかまたは原審の認定に副わない事実に立脚して原判決の違法を主張するものであつて、採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第二小法廷