退職所得となるべき会社従業員の退職手当等の金額が、会社所定の退職給与規則によらずに、国家公務員等退職手当法4条、7条により算出された金額に準拠して定められた事例
所得税更正処分等取消請求控訴事件
【事件番号】 大阪高等裁判所判決/昭和52年(行コ)第13号
【判決日付】 昭和54年2月28日
【判示事項】 退職所得となるべき会社従業員の退職手当等の金額が、会社所定の退職給与規則によらずに、国家公務員等退職手当法4条、7条により算出された金額に準拠して定められた事例
【判決要旨】 (1) 給与所得は、居住者が雇傭関係又はこれに類する関係に基づく労務提供の対価換言すれば従属労働の対価として使用者等から受ける給与にかかる所得であり、定期・定額で支給されるものと不定期に支給されるものたるとその形態を問わず、また俸給、諸手当、賞与等その支給の名称のいかんを問わないのである。
(2) 同族会社の役員が同族判定株主であるときは、その者に支給した賞与につき損金に算入しないこととする法規制をなした趣旨は、同族会社は一般に少数の株主により支配され企業所有と経営が結合されているため、会社経営が少数株主によるお手盛により比較的自由に操作できるところから、法人税の負担を不当に軽減する現象がみられることが少くなくこれを規制する必要があり、また同族判定株主である限り自己及びその同族関係者の議決権を通して会社の配当や営業に関する意思決定に支配権を及ぼす可能性が強いためにその者に対する賞与を本来の役員に対するそれと同視し損金に算入しないようにすべきであるとの見解に由来するものと考えられる。
(3) 法人税法(昭和四五年法律第三七号による改正前のもの)二条一〇号イないしハの同族会社の三つの要件については、その基準適用の順序ないし相互の優先劣後の関係を定めていないのであるから、持株数の多い株主から着目してその持株割合を検討し、同条号のイの要件を充す場合には同族判定株主をばその要件に該当する最少限の少数株主に限定しているものと解すべきではなく、その場合であっても、同条号ロ又はハの要件のいずれかに該当する同族会社の同族判定株主もまた、会社の経営に従事している限りすべて法人税法上の役員に該当するものと解するのが相当である。
(4) 省略
(5) 退職給与は、本来、退職により一時に支給を受ける給与であるから、引続き勤務する者に対して支給する給与は退職給与に該当しないのが建前であるけれども、世上一般に、会社の使用人から役員に昇格し引続き勤務する者に対し、使用人としての雇傭関係を終了させ使用人であった勤続期間に対応する退職金を支給し、その支給後に役員として在職した期間に応じ支給を受けるべき退職金を計算するにあたってさきの退職金の計算基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下にいわゆる打切支給する事例も稀ではなく、かかる場合には、社会通念的な退職と観念される事実がないからといって、その故に課税の特例を受くべき退職給与であることを否定すべき理由はない。
(6) 本件において使用人甲は、退職金の支給を受ける約二年前に法人税法上の役員となったものというべきであるが、しかしそのことは、その際同人が使用人を退職したことを意味しない。けだし法人税法上の役員になることと使用人を退職することとは別個の概念であるからである。本件において甲が使用人を退職したと評価し得るのは、同人が昭和四二年一〇月使用人から再度商法上の取締役に昇格して本件退職金を受給したときであるというべきである。
(7) 省略
【参照条文】 所得税法30
国家公務員等退職手当法7
【掲載誌】 訟務月報25巻6号1699頁
判例タイムズ388号131頁
判例時報944号38頁
税務訴訟資料104号520頁
所得税法
(退職所得)
第三十条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。
2 退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(当該退職手当等が、短期退職手当等である場合には次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とし、特定役員退職手当等である場合には当該退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額とする。)とする。
一 当該退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額が三百万円以下である場合 当該残額の二分の一に相当する金額
二 前号に掲げる場合以外の場合 百五十万円と当該退職手当等の収入金額から三百万円に退職所得控除額を加算した金額を控除した残額との合計額
3 前項に規定する退職所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「勤続年数」という。)が二十年以下である場合 四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額
二 勤続年数が二十年を超える場合 八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額
4 第二項に規定する短期退職手当等とは、退職手当等のうち、退職手当等の支払をする者から短期勤続年数(前項第一号に規定する勤続年数のうち、次項に規定する役員等以外の者としての政令で定める勤続年数が五年以下であるものをいう。第七項において同じ。)に対応する退職手当等として支払を受けるものであつて、次項に規定する特定役員退職手当等に該当しないものをいう。
5 第二項に規定する特定役員退職手当等とは、退職手当等のうち、役員等(次に掲げる者をいう。)としての政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「役員等勤続年数」という。)が五年以下である者が、退職手当等の支払をする者から当該役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものをいう。
一 法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員
二 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
三 国家公務員及び地方公務員
6 次の各号に掲げる場合に該当するときは、第二項に規定する退職所得控除額は、第三項の規定にかかわらず、当該各号に定める金額とする。
一 その年の前年以前に他の退職手当等の支払を受けている場合で政令で定める場合 第三項の規定により計算した金額から、当該他の退職手当等につき政令で定めるところにより同項の規定に準じて計算した金額を控除した金額
二 第三項及び前号の規定により計算した金額が八十万円に満たない場合(次号に該当する場合を除く。) 八十万円
三 障害者になつたことに直接基因して退職したと認められる場合で政令で定める場合 第三項及び第一号の規定により計算した金額(当該金額が八十万円に満たない場合には、八十万円)に百万円を加算した金額
7 その年中に一般退職手当等(退職手当等のうち、短期退職手当等(第四項に規定する短期退職手当等をいう。以下この項において同じ。)及び特定役員退職手当等(第五項に規定する特定役員退職手当等をいう。以下この項において同じ。)のいずれにも該当しないものをいう。以下この項において同じ。)、短期退職手当等又は特定役員退職手当等のうち二以上の退職手当等があり、当該一般退職手当等に係る勤続年数、当該短期退職手当等に係る短期勤続年数又は当該特定役員退職手当等に係る役員等勤続年数に重複している期間がある場合の退職所得の金額の計算については、政令で定める。
国家公務員退職手当法
(十一年以上二十五年未満勤続後の定年退職等の場合の退職手当の基本額)
第四条 十一年以上二十五年未満の期間勤続した者であつて、次に掲げるものに対する退職手当の基本額は、退職日俸給月額に、その者の勤続期間の区分ごとに当該区分に応じた割合を乗じて得た額の合計額とする。
一 国家公務員法第八十一条の六第一項の規定により退職した者(同法第八十一条の七第一項の期限又は同条第二項の規定により延長された期限の到来により退職した者を含む。)又はこれに準ずる他の法令の規定により退職した者
二 その者の事情によらないで引き続いて勤続することを困難とする理由により退職した者で政令で定めるもの
三 第八条の二第五項に規定する認定(同条第一項第一号に係るものに限る。)を受けて同条第八項第三号に規定する退職すべき期日に退職した者
2 前項の規定は、十一年以上二十五年未満の期間勤続した者で、通勤(国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)第一条の二(他の法令において、引用し、準用し、又はその例による場合を含む。)に規定する通勤をいう。次条第二項及び第六条の四第一項において同じ。)による傷病により退職し、死亡(公務上の死亡を除く。)により退職し、又は定年に達した日以後その者の非違によることなく退職した者(前項の規定に該当する者を除く。)に対する退職手当の基本額について準用する。
3 第一項に規定する勤続期間の区分及び当該区分に応じた割合は、次のとおりとする。
一 一年以上十年以下の期間については、一年につき百分の百二十五
二 十一年以上十五年以下の期間については、一年につき百分の百三十七・五
三 十六年以上二十四年以下の期間については、一年につき百分の二百
(勤続期間の計算)
第七条 退職手当の算定の基礎となる勤続期間の計算は、職員としての引き続いた在職期間による。
2 前項の規定による在職期間の計算は、職員となつた日の属する月から退職した日の属する月までの月数による。
3 職員が退職した場合(第十二条第一項各号のいずれかに該当する場合を除く。)において、その者が退職の日又はその翌日に再び職員となつたときは、前二項の規定による在職期間の計算については、引き続いて在職したものとみなす。
4 前三項の規定による在職期間のうちに休職月等が一以上あつたときは、その月数の二分の一に相当する月数(国家公務員法第百八条の六第一項ただし書若しくは行政執行法人の労働関係に関する法律(昭和二十三年法律第二百五十七号)第七条第一項ただし書に規定する事由又はこれらに準ずる事由により現実に職務をとることを要しなかつた期間については、その月数)を前三項の規定により計算した在職期間から除算する。
5 第一項に規定する職員としての引き続いた在職期間には、地方公務員が機構の改廃、施設の移譲その他の事由によつて引き続いて職員となつたときにおけるその者の地方公務員としての引き続いた在職期間を含むものとする。この場合において、その者の地方公務員としての引き続いた在職期間の計算については、前各項の規定を準用するほか、政令でこれを定める。
6 前各項の規定により計算した在職期間に一年未満の端数がある場合には、その端数は、切り捨てる。ただし、その在職期間が六月以上一年未満(第三条第一項(傷病又は死亡による退職に係る部分に限る。)、第四条第一項又は第五条第一項の規定により退職手当の基本額を計算する場合にあつては、一年未満)の場合には、これを一年とする。
7 前項の規定は、前条又は第十条の規定により退職手当の額を計算する場合における勤続期間の計算については、適用しない。
8 第十条の規定により退職手当の額を計算する場合における勤続期間の計算については、前各項の規定により計算した在職期間に一月未満の端数がある場合には、その端数は、切り捨てる。