契約当事者が普通保険約款を誤解して損害保険契約を締結した場合において、普通保険約款どおりの契約の成立を認めた事例
保険金請求事件
【事件番号】 札幌地方裁判所判決/昭和63年(ワ)第1810号
【判決日付】 平成2年3月29日
【判示事項】 契約当事者が普通保険約款を誤解して損害保険契約を締結した場合において、普通保険約款どおりの契約の成立を認めた事例
【参照条文】 普通保険約款
【掲載誌】 判例タイムズ730号224頁
事案の概要
一、Xは、Yとの間において店舗総合保険契約を締結したが、Yの代理店の担当者は本件契約に適用される店舗総合保険普通保険約款を誤って認識し、保険の目的である商品の盗難被害にも保険金が支払われるものと誤解していたため、Xに対し盗難被害には保険金が支払われない旨の説明をせず、したがって、Xも盗難被害に保険金が支払われるものと誤解して本件契約を締結したものであった。
本件は、対象店舗内の商品について盗難被害にあったXが、Yに対し保険金の支払を請求した事案である。
二、本判決は、普通保険約款を適用する保険契約を締結する際に、契約当事者がその保険契約に適用される普通保険約款をたまたま誤解していて、その誤解に基づく内容の意思の合致があったように見える場合でも、そのような意思の合致と見えるものは、締結しようとする保険契約に適用される普通保険約款の内容が説明を受けたとおりのものであるならば、これを適用する保険契約を締結しようという保険契約締結の動機を形成したにすぎず、当該保険契約に適用される普通保険約款とは異なる特約をする合意であるとか普通保険約款自体を変更する合意であるとみることもできないというべきであるとした。
また、そのような意思の合致と見えるものに保険契約の内容を構成するような合意としての効力を認めるとすると、多数の加入者を前提としてその多数の加入者についての危険の分散を図ろうとする保険制度の団体性に反して一部の加入者に特別の有利な契約条件を認めることにもつながるから、そのような意思の合致と見えるものが保険契約の内容になることはないと解すべきであるとし、Xの請求を棄却した。