学校法人の訴訟上の代表者と私立学校法第28条第2項の適用の有無
身分確認請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和40年(オ)第860号
【判決日付】 昭和41年9月30日
【判示事項】 学校法人の訴訟上の代表者と私立学校法第28条第2項の適用の有無
【判決要旨】 私立学校法第28条第2項は、当事者である学校法人を訴訟上代表する権限を有する者と定めるにあたっては、適用されない。
【参照条文】 私立学校法28
民事訴訟法58
民事訴訟法45
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集20巻7号1523頁
私立学校法
(登記)
第二十八条 学校法人は、政令の定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
民事訴訟法
(訴訟代理人の資格)
第五十四条 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。
2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人辻冨太郎名義の上告理由について。訴外Aが本訴提起前に被上告法人の理事長および理事を辞任した旨の原判決の事実認定は、これに対応する挙示の証拠によつて肯認できないことはなく、この点に関する所論は、原審の裁量に委ねられた証挺の取捨判断および事実認定を非難するものであつて、採用できない。
また、元来私立学校法二八条一項および二項の規定は、学校法人と実体法上の取引をする第三者に取引上必要な右法人の組織等の事項を知らしめるため右事項についての登記を要請し、右第三者の実体法上の取引保護のため右事項について登記をもつて対抗要件としているのである。これに反し、民事訴訟は、公権力をもつて実体法上の法律関係を確定する手続であつて、それ自体は実体法上の取引行為ではないから、民事訴訟において何人が当事者である学校法人を代表する権限を有するかを定めるにあたつては、右私立学校法二八条二項の規定は適用されないものと解すべきである。したがつて、学校法人を当事者とする訴訟において、右訴訟の提起前に右法人の代表者の交替があつたのにその旨の登記が経由されていない場合であつても、右法人を代表して訴訟追行の権限を有する者は、つねに交替後の新代表者である。されば、かかる場合において、第一審裁判所が訴状副本および期日呼出状の送達から判決の言渡に至るまでの一切の訴訟行為を旧代表者に対してだけし、しかも、第二審においても真正な新代表者による追認がないときは、右第一審判決は取消を免れないものと解すべきである。これを本件についてみるに、原判決の認定したところによれば、本件訴状に被上告法人の代表者理事長として表示されていた訴外Aは、本訴提起前に被上告法人の理事長および理事を辞任し、被上告法人を代表する権限を有しなかつたにもかかわらず、第一審裁判所は、被上告法人に対してすることを要する訴状副本および期日呼出状の送達から判決の言渡に至るまでの一切の訴訟行為を、終始右訴外人に対してだけし、被上告法人の新代表者に対しては全くしなかつたというのであるから、第一審裁判所は、重要な訴訟手続においてのみならず判決手続においても法令違背をしたものというべく、しかも、第二審においても新代表者による追認がなかつたのであるから、第一審判決は取消を免れない。されば、原判決は、被上告法人を代表する権限を有する者を定めるにあたつて私立学校法二八条二項が適用されるとした点において違法を犯したものではあるが、結局第一審判決を取り消しているのであるから、結論において正当というべく、また、第一審裁判所が被上告法人に対してすることを要する前記訴訟行為を右訴外人に対してだけしたのは適法であるとする所論は、到底採るを得ない。したがつて、この点に関する論旨は、結局、理由なきに帰する。
よつて、民訴法四〇一条、三九六条、三八四条二項、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷