村長が保証の趣旨で村のため約束手形を振り出した行為が民法第44条第1項の職務行為にあたるとされた事例
約束手形金請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和34年(オ)第1027号
【判決日付】 昭和37年9月7日
【判示事項】 村長が保証の趣旨で村のため約束手形を振り出した行為が民法第44条第1項の職務行為にあたるとされた事例
【判決要旨】 村長が保証の趣旨で村のため主債務者と共同で約束手形を振り出した場合、右振出につき村議会の議決がなく、かつ法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第3条に違反するとしても、村長が村を代表して手形の振出をなすこと自体は外見上村長の職務行為とみられるから、右振出は、民法第44条1項の職務行為にあたる。
【参照条文】 民法44-1
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集16巻9号1888頁
平成十八年法律第四十八号
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(代表者の行為についての損害賠償責任)
第七十八条 一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
地方自治法
第百四十九条 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
二 予算を調製し、及びこれを執行すること。
三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
四 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
五 会計を監督すること。
六 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
七 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
八 証書及び公文書類を保管すること。
九 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。
法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律
第三条 政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない。ただし、財務大臣(地方公共団体のする保証契約にあつては、総務大臣)の指定する会社その他の法人の債務については、この限りでない。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人江口繁、同内田清治の上告理由第一、二点について。
所論手形振出行為が村議会の議決がないため、または所論法律に違反するため、無効または違法であるとしても、村長が村を代表して手形の振出をなすこと自体は、外見上村長の職務行為とみられるから、民法四四条の適用なしということはできない。従つて原判決が、民法四四条一項における「職務ヲ行フニ付キ」とは、当該行為の外見上法定代理人または代表者の職務行為とみられる行為であれば足り、その行為が法人の有効または適法な行為であることを要しないとして、上告町の前身たるa村村長Aの判示約束手形二通の振出行為は右職務行為に該当し、上告町に本件不法行為上的責任がある旨判示したことは相当である。所論大審院判例は、後に同院判例(大審院昭和九年(オ)第五三三号、同年一〇月五日第二民事部判決、同昭和一四年(オ)第八一八号、同一五年二月二七日判決、民集一九巻四四一頁参照)によつて変更きれといるところであり、所論大審院判例を引用して上告人が主張する見解は、採用できない。論旨は、ひつきよう独自の見解に立脚して原判決を攻撃するに帰し、原判決に所論の違法は存せず、論旨は採るを得ない。
同第三、四点について。
原判決が本件損害額について、被上告人にも判示の如き一半の原因があるとして右過失を斟酌し、上告人が支払うべき損害額は金百万円が相当である旨判断したことは、原判決認定の事実関係からこれを是認できるところである。論旨はひつきよう独自の見解に立脚して原判決を攻撃するに帰し、原判決に所論の違法は存せず、論旨は採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷