大学専任教員の65歳定年後の再雇用に関し、被控訴人兼控訴人(一審原告)Xが、①控訴人兼被控訴人( | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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大学専任教員の65歳定年後の再雇用に関し、被控訴人兼控訴人(一審原告)Xが、①控訴人兼被控訴人(一審被告)Y法人との間で満70歳を定年とする旨の合意が存在すること、②Y法人には満70歳を定年とする労使慣行が存在すること、③Y法人がXとの間で再雇用契約を締結しないことが権限濫用に当たることを主張したものの、いずれも認容できないとされた例

 

東京高判平成29年3月9日労判1180号89頁 [学校法人尚美学園 (尚美学園大学)事件]

1 大学専任教員の65歳定年後の再雇用に関し、被控訴人兼控訴人(一審原告)Xが、①控訴人兼被控訴人(一審被告)Y法人との間で満70歳を定年とする旨の合意が存在すること、②Y法人には満70歳を定年とする労使慣行が存在すること、③Y法人がXとの間で再雇用契約を締結しないことが権限濫用に当たることを主張したものの、いずれも認容できないとされた例

2 専任教員の勤務内規は、定年に達する専任教員が勤務の委嘱の申請をした場合に学部長の審査権および上申書の提出権限を認めているが、その一方で、専任教員の勤務の委嘱にかかる決定権限が理事長にある旨を規定しており、当該上申書は、理事会の議決および理事長の決定を拘束するものではなく、その意思決定についての資料となるにとどまり、もとより当該内規は勤務の委嘱を義務付ける内容のものでもないから、そうした勤務内規に関する状況は、再雇用契約の締結を期待させる事情としては薄弱とされた例

3 本件大学では、平成12年4月の開学時から平成26年3月までの間、X同様65歳未満で採用されて定年に達し、引き続き勤務を委嘱されて満70歳以上で退職した者は6名にすぎず、定年後の再雇用の実績はわずかな例があるにすぎないから、そうした実績は、再雇用契約の締結を期待させる事情としては薄弱とされた例

4 仮に、採用面接の際に満70歳までの継続雇用の保障について説明があったとしても、当時Xは、他大学の専任教員として勤務しており、またその勤務経験も長く、大学教員の選任に関する事務にも通じていたものと推認されるから、採用面接の担当教授が教務的観点から専任教員の選考および面接をしていたことを認識していたはずであり、同教授がY法人を代表して労働条件を合意する権限を有するものと信頼したとは考えられず、また、同教授の説明は、あくまで本件就業規則の枠組みのなかでの継続雇用の可能性に関するその主観的認識を述べたものと認めるほかなく、Y法人による本件就業規則の定めに反する労働条件の提示とみることはできず、さらに、Xとしても、自身の定年は8年後であるから、それまでに定年後の再雇用について従前とは異なる運用がされ得ることは認識してしかるべきなどとされた例

5 教授会としては、いったんXの任用を承認したが、それは必ずしも積極的なものではなく、学長の意向や理事会での審議の結果等を踏まえ、理事会におけるXの再雇用の拒否の判断を受け入れたものと認められるから、教授会でXの再雇用が一時承認された経緯があるからといって、Xが再雇用契約の締結を期待するのは合理的とはいえないとされた例

6 信義則上、Y法人がXによる定年後の再雇用の申込みを承諾すべき義務があるか否かを判断するに当たり、労働契約法19条2号の趣旨を考慮することは許されるが、本件就業規則の定めからは、満70歳までの継続雇用を期待することはできないとして、一審判断が変更された例

 

労働契約法

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。