ファッションショー事件・被控訴人Y1は,同Y2の従業員を介し,控訴人らが開催したファッションショ | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属

ファッションショー事件・被控訴人Y1は,同Y2の従業員を介し,控訴人らが開催したファッションショーの映像の一部をテレビ番組で放送し,控訴人会社X1の著作権(公衆送信権)・著作隣接権(放送権)を,控訴人X2の著作権・人格権(氏名表示権)を各侵害したとして,共同不法行為責任に基づく損害賠償を求めた事案。

 

 

損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      知的財産高等裁判所判決/平成25年(ネ)第10068号

【判決日付】      平成26年8月28日

【判示事項】      被控訴人Y1は,同Y2の従業員を介し,控訴人らが開催したファッションショーの映像の一部をテレビ番組で放送し,控訴人会社X1の著作権(公衆送信権)・著作隣接権(放送権)を,控訴人X2の著作権・人格権(氏名表示権)を各侵害したとして,共同不法行為責任に基づく損害賠償を求めたところ,原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却したため,控訴人らが控訴した事案。

控訴審は,本件ファッションショーのうち本件影像部分に表れた部分において,控訴人らが著作権者であるとは認めらない等とし,同部分の放送が「その実演」(著作権法92条1項)を公衆に提供・放送する場合に当たらない等として,各控訴をいずれも棄却した事例

【掲載誌】        判例時報2238号91頁

 

 

著作権法

(定義)

第二条1項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 

九の六 特定入力型自動公衆送信 放送を受信して同時に、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することにより行う自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。)をいう。

九の七 放送同時配信等 放送番組又は有線放送番組の自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。以下この号において同じ。)のうち、次のイからハまでに掲げる要件を備えるもの(著作権者、出版権者若しくは著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の利益を不当に害するおそれがあるもの又は広く国民が容易に視聴することが困難なものとして文化庁長官が総務大臣と協議して定めるもの及び特定入力型自動公衆送信を除く。)をいう。

イ 放送番組の放送又は有線放送番組の有線放送が行われた日から一週間以内(当該放送番組又は有線放送番組が同一の名称の下に一定の間隔で連続して放送され、又は有線放送されるものであつてその間隔が一週間を超えるものである場合には、一月以内でその間隔に応じて文化庁長官が定める期間内)に行われるもの(当該放送又は有線放送が行われるより前に行われるものを除く。)であること。

ロ 放送番組又は有線放送番組の内容を変更しないで行われるもの(著作権者等から当該自動公衆送信に係る許諾が得られていない部分を表示しないことその他のやむを得ない事情により変更されたものを除く。)であること。

ハ 当該自動公衆送信を受信して行う放送番組又は有線放送番組のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定めるものが講じられているものであること。

 

(氏名表示権)

第十九条 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。

2 著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。

3 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。

4 第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。

一 行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法又は情報公開条例の規定により行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示するとき。

二 行政機関情報公開法第六条第二項の規定、独立行政法人等情報公開法第六条第二項の規定又は情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第六条第二項の規定に相当するものにより行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物の著作者名の表示を省略することとなるとき。

三 公文書管理法第十六条第一項の規定又は公文書管理条例の規定(同項の規定に相当する規定に限る。)により国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示するとき。

 

(放送権及び有線放送権)

第九十二条 実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。

2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 放送される実演を有線放送する場合

二 次に掲げる実演を放送し、又は有線放送する場合

イ 前条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て録音され、又は録画されている実演

ロ 前条第二項の実演で同項の録音物以外の物に録音され、又は録画されているもの

 

 

 

 

       主   文

 

 1 控訴人らの本件各控訴をいずれも棄却する。

 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 控訴人有限会社マックスアヴェール

  (1) 原判決中控訴人有限会社マックスアヴェールに関する部分を取り消す。

  (2) 被控訴人らは,控訴人有限会社マックスアヴェールに対し,連帯して943万4790円及びこれに対する平成21年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 控訴人X

  (1) 原判決中控訴人Xに関する部分を取り消す。

  (2) 被控訴人らは,控訴人Xに対し,連帯して110万円及びこれに対する平成21年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

 1 本件は,控訴人らが,被控訴人日本放送協会(以下「被控訴人NHK」という。)は,被控訴人株式会社ワグ(以下「被控訴人ワグ」という。)従業員を介して,控訴人らの開催したファッションショーの映像の提供を受け,上記映像の一部である原判決別紙映像目録記載の映像(以下「本件映像部分」という。)をそのテレビ番組において放送し,これにより,控訴人有限会社マックスアヴェール(以下「控訴人会社」という。)の著作権(公衆送信権)及び著作隣接権(放送権)並びに控訴人X(以下「控訴人X」という。)の著作者及び実演家としての人格権(氏名表示権)を侵害したと主張し,被控訴人らに対し,著作権,著作隣接権,著作者人格権及び実演家人格権侵害の共同不法行為責任(被控訴人ワグについては使用者責任)に基づく損害賠償として,控訴人会社につき943万4790円,控訴人Xにつき110万円(附帯請求として,これらに対する平成21年6月12日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払を求める事案である。