非行事実の認定に関する証拠調べの範囲、限度、方法の決定と家庭裁判所の裁量 暴力行為等処罰に関 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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非行事実の認定に関する証拠調べの範囲、限度、方法の決定と家庭裁判所の裁量

 

 

暴力行為等処罰に関する法律違反、現住建造物等放火未遂保護事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/昭和58年(し)第77号

【判決日付】      昭和58年10月26日

【判示事項】      非行事実の認定に関する証拠調べの範囲、限度、方法の決定と家庭裁判所の裁量

【判決要旨】      非行事実の認定に関する証拠調べの範囲、限度、方法の決定は、家庭裁判所の完全な自由裁量に属するものではなく、その合理的な裁量に委ねられたものである。

             (補足意見がある。)

【参照条文】      少年法

             少年法14

             少年審判規則19

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集37巻8号1260頁

 

 

事案の概要

 1 本件事案の概要と審理の経過等は、次のとおりである。

 すなわち、当時、千葉県立流山中央高校3年生であった少年が、集団で学校の備品等を破壊したという暴力行為処罰法違反の事実(第一事実)および外3名との共謀による学校への放火未遂の事実(第二事実)につき家裁の審判に付せられたところ、少年は、第一事実についてはこれを認めたが、第二事実については徹底してこれを否認し、附添人も、アリバイ証人を含む多数の証人を申請してこれを争った。

原原審裁判所は、附添人申請の証人のうち、アリバイ証人1名、共犯者たる証人3名を取り調べたが、目撃者2名(同高校2年在学の女子生徒)については、保護者の要望を容れて、少年・附添人の立会いなしにこれを参考人として取り調べただけで、両事実をいずれも非行事実として認定し、少年を保護観察処分に付した。

附添人は、原審において、第二事実についての事実誤認を主張するとともに、原原審の右手続を「手続の保障の観点から強く批判」したが、排斥されたため、再抗告趣意においては、右手続が憲法31条に違反すると主張していた。

 2 本決定の法廷意見は、右抗告趣意を、実質は単なる法令違反の主張であるとして排斥したうえ、「なお書きにおいて、決定要旨のような職権判断を示すに止めたが、団藤・中村両裁判官は、原原審の前記手続が、合理的な裁量を逸脱して違法である(ただし、第一事実だけでも、保護観察処分は是認しえないではないから、原決定を取り消さなくても著しく正義に反するとまではいえない)旨の詳細な補足意見を付された。

 

 

少年法

(判事補の職権)

第四条 第二十条第一項の決定以外の裁判は、判事補が一人でこれをすることができる。

 

(証人尋問・鑑定・通訳・翻訳)

第十四条 家庭裁判所は、証人を尋問し、又は鑑定、通訳若しくは翻訳を命ずることができる。

2 刑事訴訟法中、裁判所の行う証人尋問、鑑定、通訳及び翻訳に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、前項の場合に、これを準用する。

 

(検察官への送致)

第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。

 

 

少年審判規則

第十九条 刑事訴訟規則中、裁判所の行う証人尋問、鑑定、通訳、翻訳、検証、押収及び捜索に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、法第十四条第一項の規定による証人尋問、鑑定、通訳及び翻訳並びに法第十五条第一項の規定による検証、押収及び捜索について準用する