コンビニエンスストア・フランチャイズ契約締結に際して,フランチャイザーにフランチャイジー候補者に対する情報提供義務違反があるとして,契約締結上の過失による損害賠償が認められた事例
損害賠償・損害賠償(本訴),求償金等(反訴)請求控訴事件
【事件番号】 福岡高等裁判所判決/平成16年(ネ)第205号
【判決日付】 平成18年1月31日
【判示事項】 フランチャイズ契約締結に際して,フランチャイザーにフランチャイジー候補者に対する情報提供義務違反があるとして,契約締結上の過失による損害賠償が認められた事例
【参照条文】 民法415
【掲載誌】 判例タイムズ1235号217頁
LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 愛知大学法学部法経論集181号29頁
NBL835号12頁
Lexis判例速報6号56頁
民法
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
主 文
1 控訴人らの控訴に基づき,原判決主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。
(1)被控訴人は,控訴人X1に対し,856万7764円及びこれに対する平成14年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被控訴人は,控訴人X2に対し,2053万7281円及びこれに対する平成14年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)控訴人X2は,被控訴人に対し,812万8734円及びこれに対する平成14年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)控訴人らのその余の各請求及び被控訴人のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,控訴人X1と被控訴人との関係では,第1,2審を通じて,これを4分し,その1を被控訴人の,その余を控訴人X1の負担とし,控訴人X2と被控訴人との関係では,第1,2審を通じ,かつ,本訴,反訴を通じて,これを3分し,その1を被控訴人の,その余を控訴人X2の負担とする。
3 この判決は,第1項の(1)及び(2)に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人X1に対し,2925万7379円及びこれに対する平成14年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人は,控訴人X2に対し,6897万2456円及びこれに対する平成14年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被控訴人の控訴人X2に対する反訴請求を棄却する。
5 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
6 第2,3項につき仮執行宣言
第2 事案の概要等
1 本件は,被控訴人(フランチャイザー)との間でフランチャイズ契約を結んでコンビニエンスストアを開店したものの,営業不振で閉店を余儀なくされた控訴人X2(以下「控訴人X2」という。)及び一審原告a(以下「a」という。)とその夫で連帯保証人である亡b(以下「b」という。)の相続人である控訴人X1(以下「控訴人X1」という。)及び一審原告c(以下「c」という。)が,被控訴人に対し,契約締結に先立って客観的かつ的確な情報を開示するなどの信義則上の保護義務を怠った(債務不履行又は不法行為)として,損害賠償(aは同人固有の損害とbの損害の相続分を併せて1億2461万9882円,控訴人X1及びcはbの損害の相続分各3084万6201円,控訴人X2は6897万2456円)及びこれに対する遅延損害金の支払いを求め(第1事件,第2事件本訴),他方,被控訴人が控訴人X2に対し,同契約に基づく未送付金のうちの仕入代金等314万7954円,保証委託契約に基づく求償金593万8186円,金銭消費貸借契約に基づく貸金219万0548円の支払い及びこれに対する附帯請求をした(第2事件反訴)ものである。なお,各附帯請求の起算日はいずれも訴状ないしは反訴状の送達の日の翌日である。
2 原審は,a,控訴人X1及びcの第1事件請求及び控訴人X2の第2事件本訴請求をいずれも棄却し,被控訴人の第2事件反訴請求を全部認容した。
これに対し,控訴人X2と,第1事件原告らのうちでは控訴人X1のみが控訴した。なお,控訴人X1は,当審において,前記第1の2のとおり請求を減縮した。