養子縁組の無効と民法第93条但書
養子縁組無効確認請求事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和23年(オ)第85号
【判決日付】 昭和23年12月23日
【判示事項】 1、舊民法第851条第1号(新民法第802条第1号)の意義
2、養子縁組の無効と民法第93条但書
【判決要旨】 1、舊民法第851条第1号(新民法第802条第1号)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において眞に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、養子縁組は効力を生じない。
3、養親子関係の設定を欲する効果意思のないことによる養子縁組の無効は、絶対的のものであつて、民法第93条但書の適用をまつてはじめて無効となるのではない。
【参照条文】 旧民法851
民法93
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集2巻14号493頁
最高裁判所裁判集民事1号595頁
【評釈論文】 別冊ジュリスト12号104頁
別冊ジュリスト40号138頁
民法
(心裡り留保)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
(縁組の無効)
第八百二条 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百九十九条において準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士重田休助上告理由第一点について。
所論は、旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)に「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは「届出自体が当事者の意思に反する場合即ち届出其のものに瑕疵ある場合」を指すものであると主張する。しかし、それは当事者間に真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものであると解すべきは、言をまたないところである。されぱ、たとい養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それは単に他の目的を達するための便法として仮託されたに過ぎずして、真に養親子関係の設定を欲する効果意思がなかつた場合においては養子縁組は効力を生じないのである。これと同趣旨に出でた原判決には、所論のような違法はなく、論旨は、それ故に理由がない。
同第二点について。
真に養親子関係の設定を欲する効果意思がない場合においては、養子縁組は旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)によつて無効である。そして、この無効は絶対的なものであるから、所論のように原審が同第九三条但書を適用する必要もなく、又適用したものでもない。従つて、論旨は理由がない。
同第三点について。
所論指摘の各事実のみが、本件養子縁組を無効とする原判決の理由ではない。これらの事実と他の証拠を綜合して、原審は真に養親子関係の設定を欲する効果意思がないことを認定して養子縁組を無効としたものである。そして、原判決の挙げている証拠によればかかる事実の認定は、当裁判所においても肯認し得るところである。論旨は、結局原審の自由裁量権に属する証拠の取捨判断ないし事実認定に対する非難を加えるものであるから、上告適法の理由とはならない。
よつて民訴第四〇一条、第八九条、第九五条に従い主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員の一致した意見である。
最高裁判所第一小法廷