盗犯等の防止及び処分に関する法律第3条にいう「此等ノ罪」に従犯が含まれるか 常習累犯窃盗被告 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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盗犯等の防止及び処分に関する法律第3条にいう「此等ノ罪」に従犯が含まれるか

 

 

常習累犯窃盗被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和42年(あ)第2279号

【判決日付】      昭和43年3月29日

【判示事項】      1、盗犯等の防止及び処分に関する法律第3条にいう「此等ノ罪」に従犯が含まれるか

             2、同法第3条に該当する常習累犯窃盗犯行の1罪として起訴された数個の窃盗犯行の中間に同種の窃盗罪の確定判決が存在する場合の措置

【判決要旨】      1、盗犯等の防止及び処分に関する法律第3条にいう「此等ノ罪」には、同法第2条に掲記された刑法各条の罪の従犯が含まれる。

             2、同法第3条に該当する常習累犯窃盗の1罪として起訴された数個の窃盗犯行の中間に同種態様の犯行による窃盗罪の確定判決が存在し、起訴事実中右確定判決前の窃盗犯行は右確定判決にかかる窃盗犯行と共に常習累犯窃盗の1罪を構成すべきものと認められる場合、右確定判決前の犯行については、既に確定判決を経たものとして、免訴とすべきである。

【参照条文】      盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3

             刑事訴訟法337

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集22巻3号153頁

 

 

 常習一罪の中間に別罪の確定裁判があつても、その常習一罪が分断されないことにつき既に判例である(最2小決昭和39・7・9刑集18巻6号375頁)が、本件の事案は常習累犯窃盗として起訴された数個の犯行の中間に、同種犯行による単純窃盗の確定判決が存在したというものである。

本判決は判文のとおり、右確定判決を経た単純窃盗も常習累犯窃盗に該当するのとみるべきであるとし、本件起訴事実中右確定判決前の犯行については、既に確定判決を経たものとして免訴とすべきものとした。

確定判決の効力は当該判決のあつた事件についていわゆる単一性および同一性の範囲内のすべてに及ぶものであり、その場合現実に起訴処断された事実、罪名にとらわれず客観的に一罪となる範囲を確定すべきものとする通説・判例の立場からは当然の結論といえるであろう。

 

 

 

盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律

第二条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上、強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス

一 兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ

二 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ

三 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ

四 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ

 

第三条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル

 

 

刑事訴訟法

第三百三十七条 左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。

一 確定判決を経たとき。

二 犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。

三 大赦があつたとき。

四 時効が完成したとき。