日興サービス事件・労働者派遣法40条の6第1項5号による労働契約申し込みみなしの適用と労働者の承 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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日興サービス事件・労働者派遣法40条の6第1項5号による労働契約申し込みみなしの適用と労働者の承諾

 

 

              地位確認請求控訴事件

【事件番号】      名古屋高等裁判所判決/令和2年(ネ)第551号

【判決日付】      令和3年10月12日

【判示事項】      1 労働者派遣法40条の6第1項5号のいわゆる適用潜脱目的をめぐり,同号に該当する行為を行ったこと(労働者派遣以外の名目で契約を締結していることおよび当該契約に基づき労働者派遣の役務の提供を受けていること)という客観的事実の認識(悪意)から直ちにその存在が推認されるものではないが,他方で,その存在を直接的に示す証拠(行為主体の指示や発言)がなければ認められないものでもなく,その存在を推認させる事情が存在する場合はもとより,上記客観的事実の認識があり,かつ,それにもかかわらず適用潜脱目的ではないことをうかがわせる事情が一切存在しないような場合にも,その存在を推認することができるとされた例

             2 みなし申込みに対する承諾の意思表示は,それが派遣先との間の新たな労働契約の締結を内容とするものであり,かつ,その内容やそれがされた際の状況等からみて,それがみなし申込みに対する承諾の意思表示と実質的に評価し得るものであれば足りると解するのが相当であるとされた例

             3 みなし申込みに対する承諾の意思表示といい得るためには,少なくとも,使用者が変わることに伴って必然的に変更となる労働条件等があったとしても,なお派遣元との従前の労働契約の維持ではなく派遣先との新たな労働契約の成立を希望する(選択する)意思を派遣労働者が表示したと評価し得るものでなければならず,そうでなければ派遣労働者の希望を的確に反映することにはならないとされた例

             4 現行の申込みみなし制度においては,派遣労働者がみなし申込みの発生または承諾期間の進行開始を認識し得る措置は何ら講じられておらず,労働者派遣法40条の6第2項は,承諾期間について,派遣労働者が「〇〇を知った時」から進行するものとはせず,派遣労働者の認識の有無にかかわらず「同項に規定する行為が終了した日」から進行するとして,みなし申込みの効力喪失を主張することが信義則に反するとまではいえないとした一審判断が維持された例

【掲載誌】        労働判例1258号46頁

 

 

 本件の主な争点は,(1)Y法人は労働者派遣の役務の提供を受けていたか,(2)Y法人は労働者派遣法40条の6第1項5号に該当する行為を行ったか,(3)みなし申込みに対するXらの承諾の有無およびその時点,(4)派遣労働者がみなし申込みを認識したことを承諾期間の進行の要件と解すべきか,である。

 

 判決が派遣労働者らによる承諾の意思表示がなかったとしたのは,労働者がみなし申込みの存在を明確に認識せずに直接の雇用の要望を出しても,それは,労働者の自由な意思による選択権の行使と評価することはできず,むしろ,このような場合にまで労働契約の成立を認めることは,労働者の希望を的確に反映したことになるとは限らないというものであった。

 

 

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第四十条の六 労働者派遣の役務の提供を受ける者(国(行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。)を含む。次条において同じ。)及び地方公共団体(特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)の機関を除く。以下この条において同じ。)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。

一 第四条第三項の規定に違反して派遣労働者を同条第一項各号のいずれかに該当する業務に従事させること。

二 第二十四条の二の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。

三 第四十条の二第一項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること(同条第四項に規定する意見の聴取の手続のうち厚生労働省令で定めるものが行われないことにより同条第一項の規定に違反することとなつたときを除く。)。

四 第四十条の三の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。

五 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第二十六条第一項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。

2 前項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者は、当該労働契約の申込みに係る同項に規定する行為が終了した日から一年を経過する日までの間は、当該申込みを撤回することができない。

3 第一項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者が、当該申込みに対して前項に規定する期間内に承諾する旨又は承諾しない旨の意思表示を受けなかつたときは、当該申込みは、その効力を失う。

4 第一項の規定により申し込まれたものとみなされた労働契約に係る派遣労働者に係る労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から求めがあつた場合においては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、速やかに、同項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた時点における当該派遣労働者に係る労働条件の内容を通知しなければならない。