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農業協同組合を共済者とする養老生命共済契約における災害給付金及び死亡割増特約金給付の免責事由である被共済者の「重大な過失」があるとされた事例

 

 

共済金支払請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和56年(オ)第1112号

【判決日付】      昭和57年7月15日

【判示事項】      農業協同組合を共済者とする養老生命共済契約における災害給付金及び死亡割増特約金給付の免責事由である被共済者の「重大な過失」があるとされた事例

【判決要旨】      農業協同組合を共済者とする養老生命共済契約の被共済者が、夜間飲酒酩酊のうえ普通乗用車の運転を開始し、事故発生時においてさえ血液1ミリリットル中0.98ミリグラムのアルコールを保有しており、右アルコールの影響のもとに道路状況を無視し、かつ制限速度毎時40キロメートルの屈曲した路上を前方注視義務を怠つたまま漫然時速70キロメートル以上の高速度で運転をして、路上右寄りに駐車中のレッカー車に衝突して死亡した場合には、右事故につき前記養老生命共済契約における災害給付金及び死亡割増特約金給付の免責事由である被共済者の「重大な過失」があるものと解すべきである。

【参照条文】      商法641

             商法829

             農業協同組合法10の2

             農業協同組合及び農業協同組合連合会の共済規程の記載事項を定める省令(昭和29年農林省令第62号)1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集36巻6号1188頁

 

 

 判例は、「重大な過失」について、「通常人に要求される程度の相当の注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見すごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」を指すものとしている(大判大2・4民録19輯281頁、大判大2・12・20民録19輯1037頁、大判昭7・4・11民集11巻7号609頁、大判昭8・5・16民集12巻12号1178頁、最高3小判昭32・7・9民集11巻7号1203頁)。

 

 

保険法

(保険者の免責)

第十七条 保険者は、保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって生じた損害をてん補する責任を負わない。戦争その他の変乱によって生じた損害についても、同様とする。

2 責任保険契約(損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害をてん補するものをいう。以下同じ。)に関する前項の規定の適用については、同項中「故意又は重大な過失」とあるのは、「故意」とする。

 

(重大事由による解除)

第五十七条 保険者は、次に掲げる事由がある場合には、生命保険契約(第一号の場合にあっては、死亡保険契約に限る。)を解除することができる。

一 保険契約者又は保険金受取人が、保険者に保険給付を行わせることを目的として故意に被保険者を死亡させ、又は死亡させようとしたこと。

二 保険金受取人が、当該生命保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。

三 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者、被保険者又は保険金受取人に対する信頼を損ない、当該生命保険契約の存続を困難とする重大な事由

 

 

農業協同組合法

第十条の二 組合は、前条の事業を行うに当たつては、組合員に対しその利用を強制してはならない。

 

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人林光佑の上告理由一ないし四について

 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

 同五について

 本件共済契約における災害給付金及び死亡割増特約金給付の免責事由である「重大な過失」とは、損害保険給付についての免責事由を定める商法六四一条及び八二九条にいう「重大な過失」と同趣旨のものと解すべきところ、これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実によれば、亡Aは、本件事故当夜酒を五、六合飲酒してかなり酩酊のうえ普通乗用車の運転を開始し、事故発生時においてさえ血液一ミリリツトル中〇・九八ミリグラムのアルコールを保有しており、同人が右アルコールの影響のもとに道路状況を無視し、かつ、制限速度四〇キロメートルの屈曲した路上を前方注視義務を怠つたまま漫然時速七〇キロメートル以上の高速度で運転をして、折から路上右寄りに駐車中の本件レツカー車に衝突した、というのであり、右事情のもとにおいては、亡Aは極めて悪質重大な法令違背及び無謀操縦の行為によつて自ら事故を招致したものというべきであるから、右は本件共済契約における免責事由である「重大な過失」に該当するものと解するのが相当である。これと結論において同趣旨にでた原判決は結局正当であり、論旨は、採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷