ベルコ事件・代理店主であるAについては,業務の方針や成果に関しては細部にわたって被告Y社からの指示があり,これを拒否することは相当程度困難であった一方で,具体的な労務の遂行方法や労務の時間,場所については一定程度の裁量があったということができ,業務の代替性は乏しいものの,その業務を自己の計算によって行い,報酬額が労務の成果と対応しているのであって,AがY社の使用人であるということはできないとされた例
地位確認等請求事件(第1事件)、賃金請求事件(第2事件)
【事件番号】 札幌地方裁判所判決/平成27年(ワ)第1583号、平成28年(ワ)第334号
【判決日付】 平成30年9月28日
【判示事項】 1 会社その他の商人の使用人とは,その商人に従属し,その者に使用されて労務を提供する者と解するのが相当であり,これに該当するか否かは,当該商人との間の契約の形式にかかわらず,実質的にみて,当該商人から使用されて労務を提供しているといえるか否かによって判断すべきであるとされた例
2 代理店主であるAについては,業務の方針や成果に関しては細部にわたって被告Y社からの指示があり,これを拒否することは相当程度困難であった一方で,具体的な労務の遂行方法や労務の時間,場所については一定程度の裁量があったということができ,業務の代替性は乏しいものの,その業務を自己の計算によって行い,報酬額が労務の成果と対応しているのであって,AがY社の使用人であるということはできないとされた例
3 Y社が対外的にY社の内部組織として表示したか否か,代理店がY社の内部組織であるという認識をY社が有していたか否か,Aがいかなる認識を有し,表示をしていたかは,Y社のAに対する指揮命令の有無および程度に影響する事情ではないとされた例
4 Y社が原告Xらに対し,労務に関する指揮命令を行い,その対価として報酬を支払ったとみることはできないから,XらとY社との間で黙示の労働契約が成立していたということはできないとされた例
5 Y社においてAが独立した人格を有する代理商であることを主張することが信義則違反ないし権利濫用であることをうかがわせる事情はないとされた例
【掲載誌】 労働判例1188号5頁
労働基準法
(定義)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
② 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
③ 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
商法
(通知義務)
第二十七条 代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう。以下この章において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。