所得税の更正処分につき、所得金額算定部分のみを対象として独立に無効確認を求める訴えの適否(消極)
所得税更正、加算税賦課決定処分無効確認請求上告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷/昭和51年(行ツ)第33号
【判決日付】 昭和54年6月21日
【判示事項】 1 所得税の更正処分につき、所得金額算定部分のみを対象として独立に無効確認を求める訴えの適否(消極)
2 土地の交換契約の履行が不能になつたとして、裁判上の和解に基づき相手方から損害賠償金等の名目で受領した金員は、その名目のいかんにかかわらず、右交換契約に基づき相手方に譲渡した土地の反対給付であり、これには同土地の値上がりによる増加益が具体化したものも含まれているから、譲渡所得として課税の対象となるとされた事例
【判決要旨】 1 国税通則法及び所得税法は課税標準の計算及び税額の計算について、納税者に対する関係においては両者を不可分一体のものとして処分することを予定しており、申告納税方式においては更正・決定、賦課決定方式においては賦課決定という一体不可分の行政処分をする建前となつているから、これらの行政処分について、所得金額算定部分のみを対象として独立に無効確認を請求することはできない。
2 <略>
【参照条文】 国税通則法24
所得税法154
行政訴訟通則4
所得税法33
【掲載誌】 訟務月報25巻11号2858頁
税務訴訟資料105号814頁
国税通則法
(更正)
第二十四条 税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。
所得税法
(更正又は決定をすべき事項に関する特例)
第百五十四条 所得税に係る更正又は決定については、国税通則法第二十四条から第二十六条まで(更正・決定)に規定する事項のほか、第百二十条第一項第六号又は第七号(確定所得申告)に掲げる事項についても行うことができる。この場合において、当該事項につき更正又は決定をするときは、同法第二十八条第二項及び第三項(更正又は決定の手続)中「税額等」とあるのは、「税額等並びに所得税法第百二十条第一項第六号又は第七号(確定所得申告)に掲げる事項」とする。
2 所得税につき更正又は決定をする場合における国税通則法第二十八条第一項に規定する更正通知書又は決定通知書には、同条第二項又は第三項に規定する事項を記載するほか、その更正又は決定に係る第百二十条第一項第一号に掲げる金額又は第百二十三条第二項第一号(確定損失申告)に掲げる純損失の金額についての第二条第一項第二十一号(定義)に規定する所得別の内訳を付記しなければならない。
(譲渡所得)
第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。