未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合における監獄法31条2項、監獄法施行規則186条1項の各規定と憲法13条、19条、21条
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和52年(オ)第927号
【判決日付】 昭和58年6月22日
【判示事項】 1、未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合における監獄法31条2項、監獄法施行規則186条1項の各規定と憲法13条、19条、21条
2、拘置所長が未決勾留により拘禁されている者の購読する新聞紙の記事を抹消する措置をとつたことに違法はないとされた事例
【判決要旨】 1、監獄法31条2項、監獄法施行規則86条1項の各規定は、未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合においては、具体的事情のもとにおいて当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められるときに限り、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲においてのみ閲読の自由の制限を許す旨を定めたものとして、憲法13条、19条、21条に違反しない。
2、いわゆる公安事件関係の被拘禁者らによる拘置所内の規律及び秩序に対するかなり激しい侵害行為が当時相当頻繁に行われていたなど原判示の事情のもとにおいては、公安事件関係の被告人として未決勾留により拘禁されている者の購読する新聞紙の記事中いわゆる赤軍派学生によつて行われた航空機乗つ取り事件に関する部分について、拘置所長が原判示の期間その全部を抹消する措置をとつたことに違法があるとはいえない。
【参照条文】 監獄法31-2
監獄法施行規則86-1
憲法13
憲法19
憲法21
国家賠償法1-1
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集37巻5号793頁
憲法
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
平成十七年法律第五十号
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
第八節 書籍等の閲覧
(自弁の書籍等の閲覧)
第六十九条 被収容者が自弁の書籍等を閲覧することは、この節及び第十二節の規定による場合のほか、これを禁止し、又は制限してはならない。
第七十条 刑事施設の長は、被収容者が自弁の書籍等を閲覧することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、その閲覧を禁止することができる。
一 刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。
二 被収容者が受刑者である場合において、その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。
三 被収容者が未決拘禁者である場合において、罪証の隠滅の結果を生ずるおそれがあるとき。
2 前項の規定により閲覧を禁止すべき事由の有無を確認するため自弁の書籍等の翻訳が必要であるときは、法務省令で定めるところにより、被収容者にその費用を負担させることができる。この場合において、被収容者が負担すべき費用を負担しないときは、その閲覧を禁止する。
(新聞紙に関する制限)
第七十一条 刑事施設の長は、法務省令で定めるところにより、被収容者が取得することができる新聞紙の範囲及び取得方法について、刑事施設の管理運営上必要な制限をすることができる。
(時事の報道に接する機会の付与等)
第七十二条 刑事施設の長は、被収容者に対し、日刊新聞紙の備付け、報道番組の放送その他の方法により、できる限り、主要な時事の報道に接する機会を与えるように努めなければならない。
2 刑事施設の長は、第三十九条第二項の規定による援助の措置として、刑事施設に書籍等を備え付けるものとする。この場合において、備え付けた書籍等の閲覧の方法は、刑事施設の長が定める。