裁判員裁判における刺激証拠・大阪高等裁判所判決 監禁、保護責任者遺棄致死被告事件 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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裁判員裁判における刺激証拠・大阪高等裁判所判決

 

 

              監禁、保護責任者遺棄致死被告事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/令和2年(う)第552号

【判決日付】      令和3年4月19日

【判示事項】      被告人夫婦がその長女である被害者を自宅敷地内のプレハブ小屋内に設置した居室内に10年以上監禁し、生存に必要な保護を与えないまま放置して凍死させたとされる事案において、原審が被害者の死体解剖時の写真等の刺激証拠を採用して取り調べたことは、その取調べが要保護性の認識や解剖医の供述の信用性の認定判断に資するものである一方、それにより裁判所が理性的な判断を妨げられたと疑わせる事情がなく、写真等を見る者に痛ましさや悲惨さを感じさせるとしても適切な代替証拠がないなど、やむを得ない事情があったとして、原審の訴訟手続に法令違反はないとされた事例

【参照条文】      刑法219

             刑法220

             刑事訴訟法379

【掲載誌】        判例時報2496号92頁

             LLI/DB 判例秘書登載

 

 

刺激証拠

裁判員裁判で、裁判員を刺激する証拠。遺体の写真や死体解剖の写真など。

裁判員の冷静な判断に影響するから問題となる。

 

 

 

 

1 事案の概要

被告人夫婦は、①共謀の上、平成19年3月12日頃、被告人両名の長女である被害者を、自宅敷地内のプレハブ小屋内に設置した居室内で生活させるに当たり、内側からは解錠できない扉に外側から施錠し、動静を監視カメラで監視するなどして、その頃から平成29年12月18日頃までの間、被害者を監禁した、②同月上旬頃、暖房装置に接続されたサーモスタットを前年冬期よりも低温に設定したため室温が低下し、被害者が極度に痩せた状態で、かつ、衣服を着用せずに生活していたことを認識していたから、被害者の生存に必要な保護を与えるべき責任があったにもかかわらず、共謀の上、その頃以降、室温を適切に管理し、医師による治療を受けさせて十分な栄養を摂取させるなどの生存に必要な保護を与えずに放置し、同月18日頃、居室内で低栄養と寒冷環境曝露により凍死させたとして、起訴された。

 

 

 

 

 

刑法

(遺棄)

第二百十七条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。

(保護責任者遺棄等)

第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

(遺棄等致死傷)

第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 

(逮捕及び監禁)

第二百二十条 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

 

 

刑事訴訟法

第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。