死刑確定者と再審請求弁護人との面会についての当該死刑確定者からの面会時間の延長の申出及び再審請求弁護人からの面会時間の延長の申出に対して,面会時間の延長を認めない拘置所長の各措置が,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,かつ,拘置所長に過失があるとされた事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 大阪地方裁判所判決/平成30年(ワ)第5569号
【判決日付】 令和3年11月11日
【判示事項】 1 死刑確定者と再審請求弁護人との面会についての当該死刑確定者からの面会時間の延長の申出及び再審請求弁護人からの面会時間の延長の申出に対して,面会時間の延長を認めない拘置所長の各措置が,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,かつ,拘置所長に過失があるとされた事例
2 死刑確定者と再審請求弁護人との面会についての当該死刑確定者からの再審請求弁護人によるパソコンの使用の申出及び再審請求弁護人からのパソコンの使用の申出に対して,再審請求弁護人によるパソコンの使用を認めない拘置所長の各措置が,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,かつ,拘置所長に過失があるとされた事例
【判決要旨】 1 死刑確定者と再審請求弁護人との面会についての当該死刑確定者からの面会時間の延長の申出及び再審請求弁護人からの面会時間の延長の申出に対して,面会時間の延長を認めない拘置所長の各措置は,次の(1),(2)など判示の事実関係の下においては,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して,当該死刑確定者の秘密面会の利益を侵害したものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,かつ,拘置所長には過失がある。
(1) 上記各措置の当時,60分を超える面会を許すことにより拘置所の規律及び秩序を害する結果を生ずる具体的なおそれがあったような事情は認められない。
(2) 拘置所長が,上記各措置に当たって,60分を超える面会を許すことにより,拘置所の規律及び秩序を害する結果を生ずる具体的なおそれがあるか否かについて考慮した事実は認められない。
2 死刑確定者と再審請求弁護人との面会についての当該死刑確定者からの再審請求弁護人によるパソコンの使用の申出及び再審請求弁護人からのパソコンの使用の申出に対して,再審請求弁護人によるパソコンの使用を認めない拘置所長の各措置は,次の(1),(2)など判示の事実関係の下においては,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して,当該死刑確定者の秘密面会の利益を侵害したものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,かつ,拘置所長には過失がある。
(1) 上記各措置の当時,面会時のパソコンの使用を許すことにより拘置所の規律及び秩序を害する結果を生ずる具体的なおそれがあったような事情は認められない。
(2) 拘置所長が,上記各措置に当たって,拘置所の規律及び秩序を害する結果を生ずる具体的なおそれがあるか否かについて考慮した事実は認められない。
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 法学教室498号115頁
憲法
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
刑事訴訟法
第三十九条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
② 前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
③ 検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。
国家賠償法
第一条1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(面会の相手方)
第百二十条 刑事施設の長は、死刑確定者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。以下この目において同じ。)に対し、次に掲げる者から面会の申出があったときは、第百四十八条第三項又は次節の規定により禁止される場合を除き、これを許すものとする。
一 死刑確定者の親族
二 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の死刑確定者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者
三 面会により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる者
2 刑事施設の長は、死刑確定者に対し、前項各号に掲げる者以外の者から面会の申出があった場合において、その者との交友関係の維持その他面会することを必要とする事情があり、かつ、面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがないと認めるときは、これを許すことができる。
(面会の立会い等)
第百二十一条 刑事施設の長は、その指名する職員に、死刑確定者の面会に立ち会わせ、又はその面会の状況を録音させ、若しくは録画させるものとする。ただし、死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のためその立会い又は録音若しくは録画をさせないことを適当とする事情がある場合において、相当と認めるときは、この限りでない。
(面会の一時停止及び終了等)
第百二十二条 第百十三条(第一項第二号ニを除く。)及び第百十四条の規定は、死刑確定者の面会について準用する。この場合において、同条第二項中「一月につき二回」とあるのは、「一日につき一回」と読み替えるものとする。