証人が証言を拒む場合と刑訴第321条第1項第2号の適用
団体等規正令違反犯人蔵匿被告事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和26年(あ)第2357号
【判決日付】 昭和27年4月9日
【判示事項】 1、団体等規正令第10条第3項による法務総裁の出頭要求の効力に関する裁判所の審判権限
2、刑訴第321条第1項第2号の法意
3、証人が証言を拒む場合と刑訴第321条第1項第2号の適用
【判決要旨】 1、団体等規正令第10条第3項による法務総裁の出頭要求に応じない罪に関する裁判において、裁判所は、その出頭要求無効の主張に対しては審判の権限を有しない。
2、刑訴第321条第1項第2号の規定に供述者が供述することができないときとしてその事由を掲記しているのは、その記述者を裁判所において証人として尋問することを妨げるべき障碍事由を示したもので、これと同様またはそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨げるものではない。
3、証人が証言を拒む場合には、刑訴第321条第1項第2号により、その検察官の面前における供述録取書面を証拠とすることを妨げない。
【参照条文】 団体等規正令(昭和24年政令64号)10-3
団体等規正令13
刑事訴訟法321-1
刑事訴訟法146
刑事訴訟法147
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集6巻4号584頁
刑事訴訟法
第三百二十一条 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(第百五十七条の六第一項及び第二項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。
二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
② 被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
③ 検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
④ 鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。
第百四十六条 何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。
第百四十七条 何人も、左に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。
一 自己の配偶者、三親等内の血族若しくは二親等内の姻族又は自己とこれらの親族関係があつた者
二 自己の後見人、後見監督人又は保佐人
三 自己を後見人、後見監督人又は保佐人とする者