駅巡回警備業務等に従事していた警備員の原告Aら8名がなした時間外・休日・深夜割増賃金請求につき, | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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駅巡回警備業務等に従事していた警備員の原告Aら8名がなした時間外・休日・深夜割増賃金請求につき,就勤実績表の記載を基本としつつ,出退勤時刻につき準備時間等を考慮して労働時間を算定のうえ,請求を一部認容し,他方,付加金請求は棄却された例

 

 

時間外手当等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成19年(ワ)第27537号

【判決日付】      平成22年2月2日

【判示事項】      1 駅巡回警備業務等に従事していた警備員の原告Aら8名がなした時間外・休日・深夜割増賃金請求につき,就勤実績表の記載を基本としつつ,出退勤時刻につき準備時間等を考慮して労働時間を算定のうえ,請求を一部認容し,他方,付加金請求は棄却された例

             2 労基法上の労働時間の始期である出勤時刻につき,Aらは,所定始業時刻の30分前に勤務駅に到着し,制服に着替え,駅助役から受け取った装備品を着用して上番報告をするように求められ,上番報告から警備業務を開始するまでの時間は待機場所から離れることを許されていなかったのであるから,上番報告から警備業務開始までの時間は警備業務に密接不可欠な準備行為をする時間であったとして,所定始業時刻の30分前の時刻が出勤時刻とされた例

             3 労基法上の労働時間の終期である退勤時刻につき,Aらは,下番報告後に,警備報告書の作成・送信,装備品の駅助役への返却(授受簿記載),勤務シフトの調整等を行っていたことが多く,下番報告時刻より後の一定時間(30分)も労働契約上の役務の提供が義務づけられていたといえるとして,下番報告の30分後の時刻が退勤時刻であるとされた例

           4 Z駅警備業務の請負終了に伴い,Y社がこれに従事していた原告A,Hを同業務から外したことが「自宅待機」に当たるとしてなされた未払賃金請求につき,Aは他勤務地での勤務を求めるY社の申出を拒否しており,またH・Y社間に勤務地限定の合意は認められず,そして,Aらはパート社員であって,雇用契約上,所定の勤務日はあらかじめ勤務日程表で定めた日であるとされ,また勤務日の最低保障日数も定められていないのであるから,Y社においては,そもそも自宅待機を命じる必要性がなく,自宅待機命令があったとは認められないとして,同請求が退けられた例

             5 仕事中に拾った飲料等の持ち帰りや服装や身体から異臭がすることについて相勤務者や駅の助役から数回指導を受けるなどしていた原告1名(G)に対する改善指導および退職勧奨等につき,Gの勤務態度は明らかに品位を欠くものであり,Y社としても始末書提出により反省を促すだけでなく,勤務場所の変更などをして雇用維持の努力をしてきたことが認められるが,にもかかわらずGは勤務態度等を改善しなかったのであり,同人に対する退職勧奨等には合理的な理由があるとして,Gの退職勧奨後の未払賃金等の請求が棄却された例

【掲載誌】        労働判例1005号60頁

 

 

労働基準法

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

② 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。

③ 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。

④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。