運送品減失、毀損の場合の運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権の競合
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和35年(オ)第1456号
【判決日付】 昭和38年11月5日
【判示事項】 1、運送品減失、毀損の場合の運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権の競合
2、前項の不法行為に基づく損害賠償請求権の成立が認められるためには運送取扱人ないし運送人の故意または重過失を必要とするか
【判決要旨】 1、運送品の取扱上通常予想される事態ではなく、契約本来の目的範囲を著しく逸脱する態様において、運送品の減失、毀損が生じた場合には、運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権との競合が認められる。
2、前項の不法行為に基づく損害賠償請求権の成立が認められるためには、運送取扱人ないし運送人に、必ずしも故意または重過失があることを要しない。
【参照条文】 商法560
商法577
商法566
民法709
民法715
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集17巻11号1510頁
商法
(運送取扱人の責任)
第五百六十条 運送取扱人は、運送品の受取から荷受人への引渡しまでの間にその運送品が滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ、又は運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、運送取扱人がその運送品の受取、保管及び引渡し、運送人の選択その他の運送の取次ぎについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
(高価品の特則)
第五百七十七条 貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。
二 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。
第五百六十五条から第五百六十八条まで 削除
民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。