学校法人追手門学院事件・懲戒解雇
地位確認等請求事件
【事件番号】 大阪地方裁判所判決/平成27年(ワ)第13062号
【判決日付】 令和2年3月25日
【判示事項】 1 判決確定後の賃金の支払いを求める部分は将来の給付を求める訴えであるところ,あらかじめその請求をする必要を認めるに足りる的確な証拠はないとして,原告X2による当該請求が却下された例
2 原告Xらが各種委員会・理事会における議論の内容等を外部に漏らした行為等につき,漏えい行為は就業規則上の懲戒事由に該当するものの,漏えいの対象が被告Y法人関係者および守秘義務を負う弁護士に限られること,当該漏えい行為によるY法人への具体的な損害が認められないこと等を考慮し,懲戒解雇処分を行うのは重きに失するから,その権利を濫用したものとして無効とされた例
3 Y法人がXらに対する普通解雇を検討した事実がないこと,解雇が「懲戒通知書」によってなされ,解雇理由の説明も「懲戒処分説明書」をもってなされており,当該書面に普通解雇をうかがわせる記載がないことから,懲戒解雇に普通解雇の意思表示が含まれていると解することはできないとされた例
4 Y法人による普通解雇が,懲戒解雇を争うXらによる訴状送達から3年以上経過し,証人尋問および本人尋問も終了した後に,準備書面をもって予備的になされたとしても,当時,当事者双方が事後に最終準備書面を提出することを予定しており,口頭弁論終結前であったことから,時機に後れた攻撃防御方法として却下する対象とはならないとされた例
5 一般に,懲戒処分をされた従業員が被る精神的苦痛ないし人格的利益は,当該懲戒処分が無効であることを確認され,懲戒処分中の賃金が支払われることにより慰謝されるのが通常であり,これによってもなお償えない特段の精神的苦痛を生じた事実が認められるときに初めて慰謝料請求が認められるとされた例
6 賞与が功労報償的な性格を有するものであることを考慮しても,Xら以外の教職員に対する賞与が,支給率を変更することなく一律に支給されていること等を考慮すると,Y法人による不当な解雇期間中における,被解雇者たるXらによる賞与請求が権利の濫用であるとまではいえないとされた例
【掲載誌】 労働判例1232号59頁
労働契約法
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。