緊急逮捕が違法であつて勾留をも違法ならしめ勾留中に録取された供述調書は証拠能力がない旨の団藤裁判 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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緊急逮捕が違法であつて勾留をも違法ならしめ勾留中に録取された供述調書は証拠能力がない旨の団藤裁判官の意見が示された事例

 

 

              強姦致傷被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/昭和49年(あ)第2488号

【判決日付】      昭和50年6月12日

【判示事項】      緊急逮捕が違法であつて勾留をも違法ならしめ勾留中に録取された供述調書は証拠能力がない旨の団藤裁判官の意見が示された事例

【判決要旨】     一、正午ころか遅くとも午後1時30分ころに逮捕したのにかかわらず、午後10時ころになつて逮捕状の請求がなされた場合、当日が休日で最寄り簡裁まで片道2時間を要する事情があつても、右逮捕は適法ではない。

             二、緊急逮捕として許される時間を経過したのに被疑者を釈放しない違法は、勾留をも違法ならしめる。

             三、緊急逮捕として許される時間を経過したのに被疑者を釈放しなかつた違法があるときは、勾留中に作成された供述調書は証拠能力を欠く。

【参照条文】      刑事訴訟法210

             刑事訴訟法203

【掲載誌】        最高裁判所裁判集刑事196号569頁

             判例タイムズ325号282頁

             判例時報779号124頁

 

 

刑事訴訟法

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

② 前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。

③ 司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。

④ 司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

⑤ 第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

 

第二百十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

② 第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。