自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させ運転を仕向けて交通事故を引き起こさせ,事故の相手方に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,事故の相手方に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
殺人,殺人未遂,傷害被告事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/令和2年(あ)第96号
【判決日付】 令和3年1月29日
【判示事項】 自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させ運転を仕向けて交通事故を引き起こさせ,事故の相手方に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,事故の相手方に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
【判決要旨】 被告人が,自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させて運転するよう仕向けたことにより,走行中にその運転者が仮睡状態等に陥って自車を対向車線に進出させて対向車に衝突させる交通事故を引き起こし,対向車の運転者に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,対向車の運転者に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,死亡の危険性及びその認識に関する第1審判決の評価が不合理であるとする説得的な論拠を示していないなど,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
【参照条文】 刑事訴訟法382
刑事訴訟法411
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集75巻1号1頁
刑事訴訟法
第三百八十二条 事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
二 刑の量定が甚しく不当であること。
三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。