ドリフト走行が危険運転致傷罪にあたらないとされた事例 自動車運転過失傷害(変更後の訴因・危険 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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ドリフト走行が危険運転致傷罪にあたらないとされた事例

 

 

自動車運転過失傷害(変更後の訴因・危険運転致傷,原審認定罪名・自動車運転過失傷害)被告事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/平成26年(う)第1312号

【判決日付】      平成27年7月2日

【判示事項】      普通乗用自動車を運転して交差点を左折進行するに当たり,左に急ハンドルを切り,アクセルペダルを踏み込んで急激に後輪の回転数を上げ,後輪を路面に滑らせて車体を左回転させながら自車を急加速させるいわゆるドリフト走行は,その結果,制御不能の状態で自車を暴走させ,通行人と衝突させて傷害を負わせたとしても,制御不能となった時点での車両の走行速度が時速40kmを下回り,速度の点が車両の制御を不能にする主たる要因とは認められないなどの判示の事実関係の下では,危険運転致死傷罪の要件である「その進行を制御するこが困難な高速度で自動車を走行させる行為」に当たらないとされた事例

【判決要旨】      普通乗用自動車を運転して交差点を左折進行するに当たり,左に急ハンドルを切り,アクセルペダルを踏み込んで急激に後輪の回転数を上げ,後輪を路面に滑らせて車体を左回転させながら自車を急加速させるいわゆるドリフト走行は,その結果,制御不能の状態で自車を暴走させ,通行人と衝突させて傷害を負わせたとしても,制御不能となった時点での車両の走行速度が時速40kmを下回り,速度の点が車両の制御を不能にする主たる要因とは認められないなどの判示の事実関係の下では,危険運転致死傷罪の要件である「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」に当たらない。

【参照条文】      刑法208の2-1後段(平25法86号改正前)

             刑法211-2本文(平25法86号改正前)

             刑事訴訟法396

【掲載誌】        判例タイムズ1419号216頁

             LLI/DB 判例秘書登載

 

 

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)

(危険運転致死傷)

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 

 

(過失運転致死傷)

第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

 

 

刑事訴訟法

第三百九十六条 第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由がないときは、判決で控訴を棄却しなければならない。

 

 

第三百八十一条 刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて刑の量定が不当であることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

第三百八十二条 事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。