自動車の有償貸渡業者(いわゆるレンターカー会社)から自動車を借り受けた者の運行による事故につき、右貸渡業者に自賠法3条による運行供用者責任が認められた事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和43年(オ)第585号
【判決日付】 昭和46年11月9日
【判示事項】 自動車の有償貸渡業者(いわゆるレンターカー会社)から自動車を借り受けた者の運行による事故につき、右貸渡業者に自賠法3条による運行供用者責任が認められた事例
【判決要旨】 判示のような事実関係のもとにおいて自動車を貸し渡した自動車貸渡業者は、借受人の運行による事故につき自賠法3条による運行供用者としての責任を免れない。
【参照条文】 自動車損害賠償保障法3
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集25巻8号1160頁
最高裁判所裁判集民事104号177頁
裁判所時報582号1頁
判例タイムズ269号100頁
判例時報648号24頁
【評釈論文】 別冊ジュリスト47号216頁
別冊ジュリスト48号24頁
時の法令778号53頁
判例タイムズ274号83頁
法学協会雑誌90巻8号69頁
法曹時報24巻9号161頁
【出 典】 判例タイムズ269号100頁
本件は、自動車の有償貸渡業者(いわゆるレンターカー会社)が自賠法3条の運行供用者にあたると判断された事例であり、その影響は少なくないと思われる。
事案は、Y2(被告・控訴人)が、自動車の有償貸渡業者であるY1(上告人)から、その所有の本件自動車を借り受けて運転中、Y1の過失(車の整備不良)とY2の過失(前方注視義務違反等)の競合の結果、Xら(被上告人ら)の子Aに本件自動車を衝突させ、Aを死亡せしめたというものである。
XらはY1Y2を相手に損害賠償を求めたが、主要な争点の一つはY1が運行供用者にあたるかどうかであつた。
第一審は、運行支配は間接支配でも足りるとの前提に立ち、Y1がY2に本件自動車を貸し渡す際に取つた措置、貸渡契約の内容等を具体的に認定したうえ(その認定事実は、本判決が要約している。)、Y1は本件事故当時、本件自動車に対する運行支配を有し、かつ、運行利益もY1に帰属するとして、Y1の運行供用者性を認め(第一審判決は判時459・3参照)、第二審もこれを支持した(第二審判決は判時512・22参照)。
上告理由は、自動車の有償貸渡業者を運行供用者と認めることは、自賠法の立法者意思に反し、また、判例((1)最2判昭39・12・4集18・10・2043)に違反する等というものである。
本判決は、原審認定の事実、ことに、Y1が借受人を選別していること、Y1Y2間の契約内容によれば、Y2はY1に対し、本件自動車の運行につき、時間、区域等につき特定の遵守義務を負つていること、貸渡期間が短時間であること、Y1がかなりの貸渡料を得ていること等の事実関係のもとにおいては、Y1は、本件自動車に対する運行支配および運行利益を有すると解しうる旨判示したものである。
そして、かく解しても被害者保護を目的とする自賠法の立法趣旨に反するものでなく、また(1)の判決と本件とは事案に異にするとして、上告論旨を排斥した。