外国人登録令施行規則第19条の執行者の署名捺印
人身保護請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和25年(オ)第349号
【判決日付】 昭和25年12月28日
【判示事項】 外国人登録令施行規則第19条の執行者の署名捺印
【判決要旨】 外国人登録令施行規則第19条(昭和25年9月30日政令第295号による改正前のもの)に規定する、執行者の署名捺印がなくとも、退去強制令書の執行は違法とはならない。
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集4巻12号683頁
昭和二十六年政令第三百十九号
出入国管理及び難民認定法
第四節 退去強制令書の執行
(退去強制令書の方式)
第五十一条 第四十七条第五項、第四十八条第九項若しくは第四十九条第六項の規定により、又は第六十三条第一項の規定に基づく退去強制の手続において発付される退去強制令書には、退去強制を受ける者の氏名、年齢及び国籍、退去強制の理由、送還先、発付年月日その他法務省令で定める事項を記載し、かつ、主任審査官がこれに記名押印しなければならない。
昭和五十六年法務省令第五十四号
出入国管理及び難民認定法施行規則
(退去強制令書)
第四十五条 法第五十一条に規定する退去強制令書の様式は、別記第六十三号様式による。
(退去強制令書の執行依頼)
第四十六条 主任審査官は、法第五十二条第二項の規定により警察官又は海上保安官に退去強制令書の執行を依頼したときは、その結果の通知を受けなければならない。
2 主任審査官は、前項の警察官又は海上保安官が、退去強制令書による送還を終わつたとき又はその執行が不能となつたときは、その旨を記載した当該退去強制令書の返還を受けなければならない。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告理由第四について。
所論退去強制令書に執行者の署名捺印を要求した外国人登録令施行規則第一九条(昭和二五年九月三〇日政令第二九五号による改正前)の趣旨は、之により執行に関する責任の所在を明らかにし、以てその執行の適正に行われることを間接に担保したものと認むべきであり、従つてその署名捺印は執行者の何人であるかを明確にする意義を有するに止まり、これを以て右令書執行の要件をなすものと解することはできない。それ故にいやしくも権限ある者により適法に発せられに退去強制令書が権限あるものによつて適法に執行せられた以上、その執行は有効であつて右令書に執行者の署名捺印のない事実は、右令書に基く執行を違法ならしめるものではないというべきである。所論は右施行規則第一九条の法意を誤解し、これに基いて原判決の右規則及び憲法に違反することを主張するものであつて、採用の限りでない。
同第六について。
保釈は単に当該公訴事件について、勾留の継続を停止するに止まり、他の理由による拘束までも禁止する趣旨を含むものではない。故に例えば保釈後他の公訴事実によつて更に勾留されることのあり得るは勿論、或いは保護のため、或いは本件のごとく外国人登録令による退去強制のため等、行政権により一時拘束されることもあり得るのであつて、この場合その拘束にしていやしくも法律上理由がある限り、これがにめ保釈の効果が事実上制限を受けることがあっても、これは、やむを得ない結果であつて、これを以て行政権による司法権の侵犯といい得ないことは当然である。
なお原判決は不法入国者は国家的基本的人権の保護を要求する権利を有しないと判示しているが、その謬論たること所論の通りであり、いやしくも人たることにより当然享有する人権は不法入国者と雖もこれを有するものと認むべきであるが原判決は結局本件退去強制により何等上告人の基本的人権を侵害しないことを判示しているのであるから、原判決の右の違法は本件の結論に影響はなく、この点に関する論旨も採用できない。
その余の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」所定の主張に該当しないから、これについては調査しない。
よつて、民訴四〇一条、八九条、九五条並に前記民事上告事件特例法に則り主文のとおり判決する。右は全裁判官一致の意見である。
最高裁判所第二小法廷