運送品減失、毀損の場合の運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

運送品減失、毀損の場合の運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権の競合

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和35年(オ)第1456号

【判決日付】      昭和38年11月5日

【判示事項】      1、運送品減失、毀損の場合の運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権の競合

             2、前項の不法行為に基づく損害賠償請求権の成立が認められるためには運送取扱人ないし運送人の故意または重過失を必要とするか

【判決要旨】      1、運送品の取扱上通常予想される事態ではなく、契約本来の目的範囲を著しく逸脱する態様において、運送品の減失、毀損が生じた場合には、運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権との競合が認められる。

             2、前項の不法行為に基づく損害賠償請求権の成立が認められるためには、運送取扱人ないし運送人に、必ずしも故意または重過失があることを要しない。

【参照条文】      商法560

             商法577

             商法566

             民法709

             民法715

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集17巻11号1510頁

 

 

商法

 

第七章 運送取扱営業

(定義等)

第五百五十九条 この章において「運送取扱人」とは、自己の名をもって物品運送の取次ぎをすることを業とする者をいう。

2 運送取扱人については、この章に別段の定めがある場合を除き、第五百五十一条に規定する問屋に関する規定を準用する。

(運送取扱人の責任)

第五百六十条 運送取扱人は、運送品の受取から荷受人への引渡しまでの間にその運送品が滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ、又は運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、運送取扱人がその運送品の受取、保管及び引渡し、運送人の選択その他の運送の取次ぎについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。

(運送取扱人の報酬)

第五百六十一条 運送取扱人は、運送品を運送人に引き渡したときは、直ちにその報酬を請求することができる。

2 運送取扱契約で運送賃の額を定めたときは、運送取扱人は、特約がなければ、別に報酬を請求することができない。

 

 

第八章 運送営業

第一節 総則

第五百六十九条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 運送人 陸上運送、海上運送又は航空運送の引受けをすることを業とする者をいう。

二 陸上運送 陸上における物品又は旅客の運送をいう。

三 海上運送 第六百八十四条に規定する船舶(第七百四十七条に規定する非航海船を含む。)による物品又は旅客の運送をいう。

四 航空運送 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第一項に規定する航空機による物品又は旅客の運送をいう。

第二節 物品運送

(物品運送契約)

第五百七十条 物品運送契約は、運送人が荷送人からある物品を受け取りこれを運送して荷受人に引き渡すことを約し、荷送人がその結果に対してその運送賃を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(送り状の交付義務等)

第五百七十一条 荷送人は、運送人の請求により、次に掲げる事項を記載した書面(次項において「送り状」という。)を交付しなければならない。

一 運送品の種類

二 運送品の容積若しくは重量又は包若しくは個品の数及び運送品の記号

三 荷造りの種類

四 荷送人及び荷受人の氏名又は名称

五 発送地及び到達地

2 前項の荷送人は、送り状の交付に代えて、法務省令で定めるところにより、運送人の承諾を得て、送り状に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により提供することができる。この場合において、当該荷送人は、送り状を交付したものとみなす。

 

(運送賃)

第五百七十三条 運送賃は、到達地における運送品の引渡しと同時に、支払わなければならない。

2 運送品がその性質又は瑕疵かしによって滅失し、又は損傷したときは、荷送人は、運送賃の支払を拒むことができない。

(運送人の留置権)

第五百七十四条 運送人は、運送品に関して受け取るべき運送賃、付随の費用及び立替金(以下この節において「運送賃等」という。)についてのみ、その弁済を受けるまで、その運送品を留置することができる。

(運送人の責任)

第五百七十五条 運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ、又は運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、運送人がその運送品の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。

(損害賠償の額)

第五百七十六条 運送品の滅失又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によって定める。ただし、市場価格がないときは、その地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定める。

2 運送品の滅失又は損傷のために支払うことを要しなくなった運送賃その他の費用は、前項の損害賠償の額から控除する。

3 前二項の規定は、運送人の故意又は重大な過失によって運送品の滅失又は損傷が生じたときは、適用しない。

(高価品の特則)

第五百七十七条 貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない。

2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。

二 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。