①旧ダートとVidyaの本件事業譲渡契約の交渉の際に,譲受会社(Vidya)では退職金の定めがないことが明らかにされていたこと,②譲渡会社(旧ダート)の常務取締役Aは原告Xらに対して,事業譲渡によってVidyaの下では退職金がなくなるものの,旧ダートの下での退職金は同社が支払う旨の説明を行っていること,③かかる事情の下で,Xらは,Vidyaが設立した被告Y社との間で雇用契約書を交わしていること等からすれば,本件事業譲渡契約において,VidyaはY社による雇用を望む従業員とは新たに雇用契約を締結し直すことを予定しており,Xについても,退職金の支給はない旨規定する本件雇用契約書および本件労働条件通知書の内容でY社と新たな雇用契約を締結したというべきであり,「本件事業譲渡契約によって,旧ダートとXとの雇用契約とこれに基づく権利義務関係はY社に承継された」とのXの主張が退けられた例
大阪地方裁判所判決/令和元年(ワ)第7816号
令和3年3月26日
退職金請求事件
2 事実関係を踏まえれば,本件条項における「現在,旧ダートが雇用している従業員は現在の雇用条件と同条件で旧ダートがそのまま雇用し……全店舗をY社に移行した時点でY社が引き継ぐこととする」との規定は,Y社において雇用の維持を約する以上に,旧ダートにおける雇用契約を承継することまで定めたものとは解されないとされた例
3 Y社と旧ダートとの間で,旧ダートの下で発生したXに対する退職金債務をY社が引き受ける旨の合意があったとはいえず,かえって,本件条項の趣旨,本件覚書の内容,退職金に関するAの説明にかんがみれば,旧ダートは,本件事業譲渡契約後も,同社の下で発生したXに対する退職金債務を引き続き負っているとされた例
4 旧ダートがXに対し,同社の下で発生した退職金債務は同社が支払う旨を伝え,Y社が本件雇用契約書において,Xに対して退職金債務を弁済する責任を負わない旨を通知したといえることからすれば,旧ダートのXに対する退職金債務についてY社に会社法22条1項の責任があるとのXの主張は採用できないとされた例
【掲載誌】 労働判例1245号13頁