投資信託及び投資法人に関する法律に基づき設立された投資法人が行う募集投資口の発行価額について、同法82条6項の「公正な金額」ということのできないものであって、同法人の代表者による募集投資口の発行は、同法82条6項に違反する違法があるとともに、善管注意義務および忠実義務に違反する違法があるものとして、その発行の仮の差止めが認められた事例
東京地方裁判所決定/平成22年(ヨ)第20040号
平成22年5月10日
執行役員違法行為差止仮処分命令申立事件
【判示事項】 投資信託及び投資法人に関する法律に基づき設立された投資法人が行う募集投資口の発行価額について、同法82条6項の「公正な金額」ということのできないものであって、同法人の代表者による募集投資口の発行は、同法82条6項に違反する違法があるとともに、善管注意義務および忠実義務に違反する違法があるものとして、その発行の仮の差止めが認められた事例
【判決要旨】 1 投資信託及び投資法人に関する法律82条6項の「公正な金額」とは、払込金額決定前の当該投資法人の資産状態、収益および分配金の状況、将来の業績見通し、発行済投資口と募集投資口数、金融商品取引市場の動向や募集投資口の消化可能性等の諸事情を総合し、既存投資主と投資法人が有利な資金調達を実現するという利益の調和に求められるべきであるが、原則として、払込金額決定前の発行済投資口の市場価格に近接していることが必要である。
そして、日本証券業協会の平成22年4月1日付け「第三者割当増資の取扱いに関する指針」は、上場不動産投資法人が第三者割当による新投資口を発行する場合にも、払込金額が公正な金額と認められるか否かの判断基準として一応の合理性が認められ、同指針により、新投資口の払込金額を、新投資口の発行に係る役員会の承認の前日における投資口の市場価格を基準として算定するのではなく、その前日までの市場価格または売買高の状況等を勘案し、当該承認の日から払込金額を決定するために適当な期間を遡った日から当該承認の直前日までの間の平均の市場価格を基準として算定した場合に、その算定金額が払込金額として公正な金額と認められるためには、市場価格の急激な変動や当時の市場環境の動向などの当該承認の直前日の市場価格によることが相当とはいえない合理的な理由が必要である。
2 本件において、本投資法人と関連グループとは実質的な利益相反関係があること、本件投資法人の投資口の市場価格によることが相当といえない合理的な理由があったと認められないこと、払込金額を引き下げてまで資金調達をしなければならない必要性が高いとはいえないこと等からすると、本件における新投資口発行は、執行役員たる債務者の善管注意義務および忠実義務に違反し、かつ、同発行に係る払込金額は、投資信託及び投資法人に関する法律82条6項の「公正な金額」ということができない違法なものである。
3 本件における新投資口発行により、本投資法人には回復することができない損害が生ずるおそれがある。
【参照条文】 投資信託及び投資法人に関する法律82-6
投資信託及び投資法人に関する法律97
投資信託及び投資法人に関する法律109-5
民法644
会社法355
会社法360-1
【掲載誌】 金融・商事判例1343号21頁