公共企業体労働関係法(昭和27年改正前)16条にいう「公共企業体の予算上……不可能な資金の支出」の意義
最高裁判所第3小法廷判決/昭和49年(オ)第1172号
昭和53年7月18日
仲裁裁定実行請求事件
【判示事項】 公共企業体労働関係法(昭和27年法律第288号による改正前の昭和23年法律第257号)16条にいう「公共企業体の予算上……不可能な資金の支出」の意義
【判決要旨】 公共企業体の職員の給与の改善を内容とする支出であつて既定予算の給与の目に計上された金額を超えるものは、予算の移流用に関する大蔵大臣の承認がない以上、客観的にみて目の流用によりその支出が可能であるとの理由により、公共企業体労働関係法(昭和27年法律第288号による改正前の昭和23年法律第257号)16条にいう「公共企業体の予算上……不可能な資金の支出」にあたらないとすることはできない。
【参照条文】 公共企業体等労働関係法(昭和27年法律第288号による改正前の昭和23年法律第257号)35
公共企業体等労働関係法16
【掲載誌】 訟務月報24巻9号1734頁
最高裁判所裁判集民事124号413頁
判例タイムズ369号160頁
【解説】
本訴は、公共企業体仲裁委員会(現在の公共企業体等労働委員会の前身)の仲裁裁定の実行義務の確認を求める訴訟である。
すなわち、原告は、被告との賃金べ-スの改訂等についての団体交渉が決裂したため、右委員会に仲裁を申請したところ、同委員会は、職員が受けた待遇の切下げの是正として被告は45億円を支払うべき旨の仲裁裁定をした。
被告は、同裁定に関し、既定予算から費目の流用により約18億円の支出が可能であるとして、大蔵大臣にその予算の流用の承認を求めたところ、そのうちの15億500万円については承認が得られたが、残額の約3億円については承認が得られなかつたため、被告は右に相当する職員1人当り605円の支給をしなかつた。
そこで原告は、職員が右賃金債権を取得したことを理由に、その賃金債権の実行義務あることの確認を求めて、本訴を提起したものである。