街頭に掲示中の選挙運動用ポスターを撤去した行為が公職選挙法225条2号の罪にあたらないとされた事 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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街頭に掲示中の選挙運動用ポスターを撤去した行為が公職選挙法225条2号の罪にあたらないとされた事例

 

最高裁判所第2小法廷判決/昭和51年(あ)第192号

昭和51年12月24日

公職選挙法違反被告事件

【判示事項】    街頭に掲示中の選挙運動用ポスターを撤去した行為が公職選挙法225条2号の罪にあたらないとされた事例

【判決要旨】    公道内緑地帯に掲示中のいわゆるプラカード式選挙運動用ポスターを撤去した行為(判文参照)は、公職選挙法225条2号の選挙の自由妨害罪にあたらない。

(補足意見及び反対意見がある。)

【参照条文】    公職選挙法145-1

          公職選挙法225

          公職選挙法施行規則18

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集30巻11号1932頁

【解説】

 事案の概要は、判文に掲記のとおりで、1区民が選挙浄化の信念で保守・革新の別なく掲示違反のポスターを一律に撤去した点に特色がある(巷間よくみられるポスター自体の破棄を伴つておらず、結果においても、ポスターは約30分後に無傷で警察に回収されている。)。 上告審において選挙の自由妨害が否定された例としては、東京都知事選に際してのいわゆる「般若苑マダム物語事件」につき公選法225条2号にいう「偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害する」行為の意義を2審より限定的に解した最高1小判昭44・2・6刑集23・2・83。判タ233・241はあるが、文書図画の毀棄に関するものは、本件がはじめてのようである。

 判文中の公選法145条1項に関する行政解釈は、「国又は地方公共団体用地内に支柱又は掲示板を設け、これに選挙運動用ポスターを掲示することは、本条に違反しない。」旨の見解(選挙時報12巻6号33頁)にそうもので、宇津呂英雄・注釈選挙犯罪72頁にも同旨の説明部分(「道路に直接掲示したと認められない限り」との限定付)がある。

本判決は、右の行政解釈を否定したもので、ことに、詳細な理由づけをされた岡原裁判官の補足意見が注目の対象になるものと思われる。

 違法な選挙運動と選挙の自由妨害罪の保護の客体となる選挙運動との関係をどう理解するかは、大きな問題といえる。

本件のような文書図画の毀棄に関し、宇津呂・前掲227頁は、「その掲示が違法であることが明らかである文書図画を第三者が撤去する行為も、選挙妨害に該当しないといわざるをえない。」とされる。本判決は、選挙の自由妨害罪の保護の対象となる選挙運動は原則として適法なものに限られるとした。