労契法18条1項に基づき無期転換した後の労働条件に関し,無期転換後の労働者に適用される就業規則が | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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労契法18条1項に基づき無期転換した後の労働条件に関し,無期転換後の労働者に適用される就業規則が別途定められている場合において,当初から無期労働契約を締結している労働者に適用される就業規則が適用されないと判断された事例

 

大阪地方裁判所判決/平成31年(ワ)第3718号

令和2年11月25日

地位確認等請求事件

【判示事項】    労契法18条1項に基づき無期転換した後の労働条件に関し,無期転換後の労働者に適用される就業規則が別途定められている場合において,当初から無期労働契約を締結している労働者に適用される就業規則が適用されないと判断された事例

【参照条文】    労働契約法3-2

          労働契約法3-4

          労働契約法7

          労働契約法10

          労働契約法18

【掲載誌】     判例タイムズ1482号212頁

          判例時報2487号97頁

          労働判例1237号5頁

【解説】

 1 事案の概要

 (1) Xらは,Yと有期労働契約を締結し,トラック運転手として配送業務に従事しながら,以後更新を重ねたものである。

 X1とYとの間には,本件訴訟に先立ち,各種手当等の支給について,雇用当初からYと無期労働契約を締結している労働者(以下「正社員」という。)と有期労働契約者とで扱いが異なることが労契法20条(平成30年号外法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反するかが争われた訴訟(ハマキョウレックス事件)があり,無事故手当,作業手当,給食手当,皆勤手当及び平成25年12月以前の通勤手当の支給の相違は労契法20条に違反し不法行為を構成する旨の判決が確定している(最高裁平成30年6月1日第二小法廷判決・民集72巻2号88頁,判タ1453号58頁,大阪高裁平成30年12月21日判決・労経速報2369号18頁)。

 Yは,上記判決を受けて,平成30年10月1日以降,無事故手当,作業手当,食事手当を,同年12月1日以降,皆勤手当を月間所定時間で除して時給換算した金額を処遇改善費としてXらの賃金に組み入れた。

 (2) Xらは,平成30年4月1日,Yに対し,労契法18条1項に基づき,Xらが締結している有期労働契約の契約期間が満了する同年9月30日の翌日である同年10月1日を始期とする無期労働契約の締結を申込み,Yは,同条項に基づき,これを承諾したものとみなされた(以下「無期転換」という。)。

 Xらは,本件訴訟において,労契法18条1項に基づき無期転換した後の労働条件について,雇用当初から無期労働契約を締結している正社員に適用される就業規則(以下「正社員就業規則」という。)によるべきであると主張して,Yに対し,①正社員就業規則に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,②労働契約に基づく賃金請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権として,無期転換後の平成30年10月分の賃金について正社員との賃金差額の支払を求めた。

 (3) Yには,正社員就業規則とは別に,有期労働契約を締結している労働者に適用される就業規則(以下「契約社員就業規則」という。)があったところ,Yは,平成29年10月1日付けで,契約社員就業規則に無期転換に関する規定を追加し,「無期転換後の労働条件は,現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件とする。」と定めている(以下「無期転換規定」という。)。

 また,Xらは,平成30年11月2日,Yとの間で,無期転換後の労働条件は契約社員就業規則による旨の記載のある契約書(無期パート雇用契約書)を交わしている。

 2 本判決の判断

 本判決は,次のように判示して,無期転換後の労働条件に関し,正社員就業規則を適用することはできないとして,Xらの請求をいずれも棄却した。

 Yにおいて,有期労働契約者と正社員とで,職務の内容に違いはないものの,職務の内容及び配置の変更の範囲に関して違いがあり,無期転換後のXらと正社員との間にも同様の違いがあるところ,無期転換後のXらと正社員との労働条件の相違も,両者の職務の内容及び配置の変更の範囲等の就業の実態に応じた均衡が保たれている限り,労契法7条の合理性の要件を満たしている。

 仮に,無期転換後のXらと正社員との労働条件の相違が両者の就業実態と均衡を欠き労契法7条に違反すると解された場合であっても,契約社員就業規則の該当部分がXらに適用されないというにすぎず,正社員就業規則と契約社員就業規則が別個独立のものとして作成されている以上,労契法7条の効力としてXらに正社員就業規則が適用されることになるものではない。

 また,労契法18条は,有期労働契約者の雇用の安定化を図るべく,無期転換により契約期間の定めをなくすことができる旨を定めたものであって,無期転換後の契約内容を正社員と同一にすることを当然に想定したものではない。

 そして,無期転換規定は,労契法18条1項第2文と同旨であり,無期転換後のXらに契約社員就業規則が適用されることによって,無期転換の前後を通じて期間の定めを除きXらの労働条件に変わりはないから,無期転換規定の追加は不利益変更に当たらない。