選挙運動に携わろうとする者の間における選挙運動費用の前渡しと事前運動の罪および供与・受供与の罪の成否
東京高等裁判所判決/昭和45年(う)第1795号
昭和47年4月10日
公職選挙法違反被告事件
【判示事項】 選挙運動に携わろうとする者の間における選挙運動費用の前渡しと事前運動の罪および供与・受供与の罪の成否
【判決要旨】 選挙運動に携わろうとする者の間における金銭の授受が選挙運動費用の前渡しである以上、それが立候補届出前になされたものであり、しかも後日出納責任者の文書による承諾の手続を経なかつた違法があるからといつて、いわゆる事前運動の罪にも供与・受供与の罪にもあたるとはいえない。
【参照条文】 公職選挙法129
公職選挙法239
公職選挙法221-1
【掲載誌】 高等裁判所刑事判例集25巻2号96頁
東京高等裁判所判決時報刑事23巻4号56頁
判例タイムズ280号327頁
主 文
原判決中被告人らに関する部分を破棄する。
被告人らはいずれも無罪。
【解説】
本件は、選挙参謀ないし選挙運動者の間の金銭の授受につき事前運動罪および供与・受供与罪の成立を認めた原判決を破棄し無罪を言い渡した事例であるが、その判示内容は種々注目すべきものを含む。
本判決は、まず右授受にかかる金銭の趣旨につき、選挙運動の報酬ないしは饗応等の費用ということが含まれている疑いを払拭しえないとしつつも、そう認定するには合理的な疑いが残り、もつぱら公選法の認める正当な支出のための費用の前渡として授受されたと考える疑いも相当強いとした。
実務では費用の授受であると認められることが少ないとされているだけに(小林「選挙犯罪の研究」司法研究報告書22輯3号172参照)、この点についての本判決の詳細な証拠判断は参考とされてよいであろう。
そして、さらに本判決は、本件金員がかりに選挙運動費用として授受されたものとしても、やはり違法な金員支出であり違法な選挙運動に伴なう金員授受であるから供与・受供与罪に該当するとの原判示を排斥し、その場合の違法は公選法246条4号、187条1項(あるいは事前運動罪)の該当性の問題であり、供与・受供与罪を成立させるものではないとした。