被告Y病院において,内科医長として勤務していた原告Xに対する本件解雇につき,XはY病院の取決めに反し,診療開始時刻の不遵守,保険適用外検査の無許可実施,書類作成・カルテ返却の懈怠等を行ったもので,これらの事実は,それぞれXの服務規律違反を示すとともに,全体として服務規律に従おうとする姿勢の欠如を推認させ,また,患者やその家族とのトラブル,不必要な検査の実施,処方の無断変更については,患者と接する臨床医として,また組織で医療行為を行うY病院に所属する医師としての資質・能力に疑問を抱かせるに十分で,就業状況の不良を示すものであり,以上を総合すれば,Xには少なくとも就業規則上の解雇事由があるものとされた例
福井地方裁判所判決/平成19年(ワ)第435号
平成21年4月22日
地位確認等請求事件
【判示事項】 1 被告Y病院において,内科医長として勤務していた原告Xに対する本件解雇につき,XはY病院の取決めに反し,診療開始時刻の不遵守,保険適用外検査の無許可実施,書類作成・カルテ返却の懈怠等を行ったもので,これらの事実は,それぞれXの服務規律違反を示すとともに,全体として服務規律に従おうとする姿勢の欠如を推認させ,また,患者やその家族とのトラブル,不必要な検査の実施,処方の無断変更については,患者と接する臨床医として,また組織で医療行為を行うY病院に所属する医師としての資質・能力に疑問を抱かせるに十分で,就業状況の不良を示すものであり,以上を総合すれば,Xには少なくとも就業規則上の解雇事由があるものとされた例
2 本件解雇に先立ち具体的な指導や注意はなされておらず,懲戒処分としても訓戒処分が1度なされたのみであった等のX主張につき,一般に医師は,病院において他の職員とは異なる特殊な地位を有し,その立場や意見が尊重されており,実際,XはY病院での勤続年数も14年と長く,内科医長として相当高額な報酬の支払いを受け,従業員の中では院長に次ぐ高い地位にあったのであるから,Xは他の医師や職員らを指導しその模範となるべき立場にあり,その立場を踏まえて自己研鑽に努め,自分自身で行動を規律することを求められていたといえるところ,上記立場に照らせば,臨床医として,Y病院所属の医師として,適切な行動や診療行為を行うことは当然の前提であって,改めて注意されるべき事項ではないことからすれば,Y病院から具体的かつ明示的な注意や指導があまり行われてこなかったことを重視するのは相当ではなく,加えてY病院は,医局に対する指示等の形で指示・指導を行うなど,Xに対して注意や指導をなし,行動を改める契機を何度も与えてきたといえるとされた例
3 上記2に加え,Xを医業以外の職務に従事させることはできず,Y病院の組織規模では配置転換なども事実上できないことを勘案すると,本件解雇には社会通念上の相当性が認められ,解雇権濫用に当たらず有効であるとして,Xの地位確認請求,医師としての就労請求,賃金および賞与の請求が棄却された例
4 Y病院による,Xの受持ち患者数の減少,序列逆転となる人事措置,退職勧奨・いじめ,監視行為および本件解雇自体が,いずれも不法行為ないし債務不履行を構成するものとは認められないとして,Xの損害賠償請求が棄却された例
【掲載誌】 労働判例985号23頁
労働経済判例速報2040号14頁