不正競争防止法1条1項1号にいう商品の混同と同項柱書にいう「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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不正競争防止法1条1項1号にいう商品の混同と同項柱書にいう「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」

 

最高裁判所第3小法廷判決/昭和54年(オ)第145号

昭和56年10月13日

不正競争防止法に基づく差止請求事件

【判示事項】    1、不正競争防止法1条1項1号にいう商品の混同と同項柱書にいう「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」

2、商標権者による登録商標に類似する標章の使用と不正競争防止法6条

【判決要旨】    1、不正競争防止法1条1項1号にいう他人の商品との混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、右他人は営業上の利益を害されるおそれがある者にあたるというべきである。

2、商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為は、不正競争防止法6条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当しない。

【参照条文】    不正競争防止法1-1

          不正競争防止法6

          商標法25

          商標法36

          商標法37

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集35巻7号1129頁

 

【解説】

 1 世界的ハンバーガー・チェーン会社「マクドナルド・コーポレーション」は、1955年(昭和30年)に設立され、どの店舗においても均1の食品・価格・サービスを可能にする経営システムを採り、米国において早くから著名となり、日本にも昭和41年頃から雑誌等で紹介されていた。

X(原告・控訴人・被上告人)は、昭和46年5月1日、右マクドナルド・コーポレーションが50%、株式会社藤田商店及び第1屋製パン株式会社が各25%出資して設立された合弁会社で、同年7月20日東京銀座3越第1号店を開設し、翌47年3月30日までに合計8店舗を開設し、昭和50年5月当時約65店、昭和52年11月当時約120店となり、ハンバーガー、フライドポテト、ミルクシェークなどを販売して好評を博し、驚異的な売上げ額を示した。

Xが使用する「図案化したMとMcDonald’sの文字の組合わせ」からなる標章、「McDonald’s」・「マクドナルド」・「マック」などの各標章(Xの標章(イ)、(ホ)、(ヘ)、(チ)など)は昭和46年7月以降日本国内において広く認識され、顕著な識別力を有する周知の標章である。

 Y1株式会社マルシンフーズ(被告・被控訴人・上告人)は、ハンバーグ、シューマイ、ソーセージ等の加工食品の製造販売を主な営業内容とする会社であり、Y2マック産業株式会社(被告・被控訴人・上告人)は、昭和46年9月22日Y1の全額出資により設立され、Y1所有の自動販売機を繁華街の商店や郊外のドライブイン等に設置してY1から購入したハンバーガーを右自動販売機により販売しており、自動販売機及び容器・包装には、(Mac Burger」・「マックバーガー」の標章(Yらの標章(2)・(3))が表示されている(その他に、「図案化したMとMac Burgerの文字の組合せ」からなる標章(Yらの標章(1))を使用していたが、これは昭和48年6月以降は使用していない)。

なお、Y1は、商標「マック」及び商標「バーガー」について商標権を有するが、いずれも昭和44年以後に他から譲り受けたものである。

 2 Xは、不正競争防止法1条1項1号及び2号に基づき、Y1Y2がその製造販売にかかる商品ハンバーガーの容器・包装・広告及び自動販売機に、Yらの標章(1)(2)(3)を使用し、又はこれらの標章を使用した商品ハンバーガーを販売することの差止を、同法1条の2第1項及び第3項に基づき、損害賠償及び謝罪広告を、請求するものである。

 これに対し、Y1Y2は、(1)Xの各標章の周知性及びこれとYらの各標章の類似性を争つたほか、両者の販売方法の差異により両者の商品の誤認混同を生じないと主張し、(2)Y1Y2は、その各標章の使用は不正競争防止法6条にいう商標権の行使に当る、と主張した。

 1審判決は、Yらの標章(1)については、Yらは昭和48年6月以降使用しておらず、将来も使用する意思もないので、差止請求は理由がなく、それ以前の標章(1)の使用によるXの損害については立証がなく、謝罪広告を以てしなければ回復できない程の営業上の信用を害されたものとは認められない、として、差止・損害賠償・謝罪広告の全ての請求を棄却し、また、Yらの標章(2)(3)については、Xの標章との類似性はあるが、販売方法の差異は顕著であって商品の混同のおそれはないとして、差止・損害賠償・謝罪広告の全ての請求を棄却した。

 Xは、差止請求を棄却された点についてのみ不服を申立てて、控訴した。

原判決は、Yらの標章(1)については、1審判決と同じ理由で差止請求を棄却したが、Yらの標章(2)(3)については、商品混同のおそれがあると認定したうえ、Yらの主張に対し、「他に特段の事情が認められない本件においては、Yらの右行為(YらのXの商品表示と類似する商品表示を使用)によりXの営業上の利益を害せられるおそれがあると認めるのが相当である。」、「商標権者といえども、登録商標の類似範囲にある標章については、他人の使用を排除する権利があるとしても、当該登録商標と同様に当然にこれを使用しうる権利を有するものとはいえず、類似標章の使用は不正競争防止法第6条の商標法による権利の行使に該当しないと解するのが相当である」として、差止請求を認容した。

 本判決は、右の原審の判断を正当として是認したものである。