育児短時間勤務制度の利用を理由とする昇給抑制の違法性 東京地方裁判所判決 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

育児短時間勤務制度の利用を理由とする昇給抑制の違法性

 

東京地方裁判所判決/平成26年(ワ)第6956号

平成27年10月2日

地位確認等請求事件

社会福祉法人全国重傷心身障害児(者)を守る会事件

【判示事項】    1 育児・介護休業法23条の2の規定は,同法の目的および基本理念を実現するためにこれに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当であり,労働者につき,所定労働時間の短縮措置の申出をし,または短縮措置が講じられたことを理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは,その不利益な取扱いをすることが同条に違反しないと認めるに足りる合理的な特段の事情が存しない限り,同条に違反するものとして違法であり,無効であるとされた例

2 本件昇給抑制は,本件制度の取得を理由として,労働時間が短いことによる基本給の減給(ノーワークノーペイの原則の適用)のほかに本来与えられるべき昇給の利益を不十分にしか与えないという形態により不利益取扱いをするものであり,育児・介護休業法23条の2に違反する不利益な取扱いであるとされた例

3 強行規定である育児・介護休業法23条の2の禁止する不利益取扱いの行為は無効となるのが原則であるが,本来与えられるべき利益を与えないという不作為の形で不利益取扱いをする場合において,合わせて不十分な利益を与える部分が併存するとき,この利益を与える部分を含めて当該行為を全部無効とすれば,かえって労働者は不十分な利益すら失ってしまうことになるので,同条の規定の趣旨を没却するものでない限り,その限度で不利益取扱いには当たらないと解すべきであり,また,不作為の行為の無効ということを観念する実益に乏しいことから,本件昇給抑制にかかる行為を無効とは解さないとされた例

4 育児・介護休業法23条の2が,事業主において解雇,降格,減給などの作為による不利益取扱いをする場合に,禁止規定としてこれらの事業主の行為を無効とする効果を持つのは当然であるが,本件昇給抑制のように,本来与えられるべき利益を与えないという不作為の形で不利益取扱いをする場合に,そのような不作為が違法な権利侵害行為として不法行為を構成することは格別,さらに進んで本来与えられるべき利益を実現するのに必要な請求権を与え,あるいは法律関係を新たに形成ないし擬制する効力までをも持つものとは,その文言に照らし解することができないとされた例

5 被告Y法人の定める号給資格の号給数という法律関係の確認については,これに表象される賃金体系,手当等の待遇上の金銭的利益の格差を問題にしているような場合には確認の利益があるが,過去の法律関係については確認の利益に欠けるとされた例

6 育児短時間勤務制度を利用したため,昇給が抑制されたとする原告Xらによる損害賠償請求等につき,昇給の事実がないため労働契約に基づく賃金請求権として請求することはできないが,不法行為に基づく損害賠償として,差額賃金相当分の支払いおよび慰謝料(10万円)の請求が認められた例

【掲載誌】     労働判例1138号57頁

労経速2270号3頁