労働者が,使用者の行う企業秩序違反事件の調査について協力する義務は,そのような調査に協力すること | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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労働者が,使用者の行う企業秩序違反事件の調査について協力する義務は,そのような調査に協力することが当該労働者の職責に照らして職務内容となっていると認められる場合か,調査対象である違反行為の性質・内容,違反行為の見聞の機会と職務執行との関連性,より適切な調査方法の有無など,諸般の事情から総合的に判断して,その調査に協力することが労務提供の義務を履行するうえで必要かつ合理的と認められる場合でない限り,その義務を負わないとされた例

 

東京高等裁判所判決/平成16年(ネ)第5005号

平成17年3月23日

退職金等請求控訴事件

労働政策研究・研修機構事件

【判示事項】    (1) 控訴人が,就業時間中に業務用パソコンを使用して行った,他部署の文書データへの頻繁なアクセスは,控訴人の業務と無関係なものとは推認できず,若干の被控訴人会社内のものとは考えがたい文書データへのアクセスは,就業規則所定の職務専念義務には違反するが,その程度は極めて軽微であるから,この義務違反を退職金の減額事由にすることはできないとした一審の判断が維持された例

          (2) 労働者が,使用者の行う企業秩序違反事件の調査について協力する義務は,そのような調査に協力することが当該労働者の職責に照らして職務内容となっていると認められる場合か,調査対象である違反行為の性質・内容,違反行為の見聞の機会と職務執行との関連性,より適切な調査方法の有無など,諸般の事情から総合的に判断して,その調査に協力することが労務提供の義務を履行するうえで必要かつ合理的と認められる場合でない限り,その義務を負わないとされた例

          (3) 控訴人の退職直前の職位および業務内容からみて,被控訴人会社が行う企業秩序違反事件の調査に協力することが控訴人の職務内容になっていたとは認められず,有給休暇中に出社して被控訴人の労務提供義務の履行にとって,必要かつ合理的であったとは認められないとされた例

          (4) 控訴人が本件の出頭命令に応じなかったことは退職手当支給規程7条の退職手当の減額事由に該当するとした一審の判断を変更して,控訴人が,被控訴人会社の本件出頭命令に応じなかった行為は,控訴人の労務提供義務に付随する義務に違反したものと認めることはできないから,被控訴人会社の本件退職手当の減額措置はその裁量を逸脱濫用したものであるとして,被控訴人に対して退職金未払分(49万5489円)の支払いが命じられた例

          (5) 退職を承認できない場合がある旨の内容証明郵便の送付が違法な脅しとはいえず,出勤した場合に恫喝や暴力を加えられるおそれがあったことを認めることもできないとして,控訴人による不法行為を理由とする損害賠償の請求が退けられた例

【掲載誌】     労働判例893号42頁