相続税の課税対象となる財産は多種多様であり、これらの各財産の通常の取引価格は必ずしも一義的に確定されるものではないことから、国税庁においては、財産評価基本通達を定め、内部的な取扱いを統一するとともに、これを公開して納税者の申告・納税の便に供し、もって申告及び課税事務の公平、迅速で円滑な運用に資することとしているところであり、相続税に係る財産の評価に当たっては、原則として同通達によるのが相当であるということができるが、同通達に従って課税価格を算定することが負担の実質的公平を損なうなど著しく不合理な結果になると認められる特段の事情がある場合には、同通達によらず、他の適正、妥当な合理的と認められる方法により評価すべき者と解される。
大阪高等裁判所判決/平成12年(行コ)第43号
平成13年4月20日
処分取消請求控訴事件
【判示事項】 (1) 相続税法22条(評価の原則)に規定する「時価」の意義(原審判決引用)
(2) 財産評価基本通達が定める画一的な評価方法の合理性と同通達によらない特段の事情(原審判決引用)
(3) 相続財産である土地の評価にあたり、納税者が依頼した鑑定評価書による評価額は、土地の種別が宅地見込地地域内の宅地見込地であるにもかかわらず、農地地域内の農地であることを前提として行ったものであるから、鑑定の方法自体に問題があることになり、これに示された鑑定評価額は採用し難いものであるから、右鑑定評価書による土地の評価額が土地の適正な時価を示すものであると認めることはできず、右鑑定評価書によって、財産評価基本通達によらない「特段の事情」があるということはできないとされた事例(原審判決引用)
(4) 相続財産である土地の評価にあたり、納税者らが遺産分割協議のために依頼した評価時点を平成8年とする鑑定評価書は、その評価手法におおむね問題がないものと認められるから、右単価を基に個別的要因による補正を行い、地積を乗じ、さらに相続開始時点(平成4)までの時点修正を行うことにより、課税時点の時価を算出すると、その合計額は約3億円となり、財産評価基本通達により算定された価額(約4億円)を下回るものであり、右土地につき財産評価基本通達に従って課税価格を算定することが著しく不合理な結果になると認められる特段の事情があるということができるから、右土地の価額は、約3億円と認めるのが相当であるとされた事例(原審判決引用)
(5) 相続財産である土地の周辺は宅地として利用されており、宅地見込地と評価することは違法ではないとされた事例
【判決要旨】 (1) 相続税法22条にいう「時価」とは、相続開始時における相続財産の客観的交換価値、すなわち、通常の取引価格と解するのが相当である。
(2) 相続税の課税対象となる財産は多種多様であり、これらの各財産の通常の取引価格は必ずしも一義的に確定されるものではないことから、国税庁においては、財産評価基本通達を定め、内部的な取扱いを統一するとともに、これを公開して納税者の申告・納税の便に供し、もって申告及び課税事務の公平、迅速で円滑な運用に資することとしているところであり、相続税に係る財産の評価に当たっては、原則として同通達によるのが相当であるということができるが、同通達に従って課税価格を算定することが負担の実質的公平を損なうなど著しく不合理な結果になると認められる特段の事情がある場合には、同通達によらず、他の適正、妥当な合理的と認められる方法により評価すべき者と解される。
(3)~(5) 省略
【掲載誌】 税務訴訟資料250号順号8887