相続財産である土地の評価にあたり、生産緑地地区に適合していることが指定告示により確認された農地に | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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相続財産である土地の評価にあたり、生産緑地地区に適合していることが指定告示により確認された農地については、生産緑地地区指定の申込時から生産緑地地区の農地として法的に取り扱われるべきであるとの納税者の主張が、生産緑地地区となるためには、都市計画において生産緑地地区と定められることを要し、右都市計画はこれを決定又は変更した旨の告示があった日からその効力を生ずるとして排斥された事例

 

東京高等裁判所判決/平成11年(行コ)第96号

平成12年3月28日

相続税更正処分取消等請求控訴事件

【判示事項】    (1) 更正処分の取消を求める訴えの利益は、納付すべき税額の増減に着目して判断すべきものであるから、納付すべき税額を修正申告時における金額より減額した更正処分の取り消しを求める訴え利益はない(最高裁平成3年12月5日第1小法廷判決・税務訴訟資料187号264頁)とされた事例(原審判決引用)

          (2) 過少申告加算税を減額させる変更決定処分は、当初の過少申告加算税賦課決定処分を変更するものであり、その後は、当初の過少申告加算税賦課決定処分が変更後のものとして維持され、変更決定処分自体は役目を終えて消滅すると解するのが相当であり、変更決定処分自体の取消しを求める利益は認められないとされた事例(原審判決引用)

          (3) 租税特別措置法70条の6(農地等についての相続税の納税猶予等)の適用の可否について不服があるときは、更正処分の取消訴訟等において争うのではなく、相続税の徴収手続において、申告期限までに納付するべき金額が過大である旨を主張して、その減額に応じた徴収手続を求めるべきであるとされた事例(原審判決引用)

          (4) 更正処分の後に、納付すべき税額を増額する再更正処分が行われた場合には、当初の処分は後の処分に吸収され当初の更正処分の取消を求める訴えの利益はないと解されるから、納税者らの訴えのうち、当初の更正処分の取消しを求める訴えの利益はないとされた事例(原審判決引用)

          (5) 過少申告加算税賦課決定処分は、更正処分の場合と異なり、過少申告加算税を増額する処分が行われたときには、後に行われた過少申告加算税賦課決定処分は、以前に行われた過少申告加算税賦課決定処分の効力を失わせるものでなく、過少申告加算税を追加的に賦課する旨の決定であると解すべきであるから、納税者らの当初の過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えの利益はあるとされた事例(原審判決引用)

          (6) 被相続人が死亡し、納税者らが本件農地を相続したときにおいて、本件農地は、都市営農農地等に当たらず、特別市街化区域農地等に該当すること等から、本件農地の相続については、措置法70条の6(農地等についての相続税の納税猶予等)に規定する相続税の納税猶予を受けられないとされた事例(原審判決引用)

          (7) 租税特別措置法に定める課税の特例を廃止したことによって、税負担がにわかに過重なものとなることを抑制するため、いわば、猶予期間として、経過措置を設けた場合に、一般の租税法規の解釈原則どおり、あるいはそれ以上に猶予期間である経過措置の適用については、厳格かつ画一的に行うべきであり、経過措置の適用期間を拡大解釈して適用することは、相当でなく、さらに、時間の経過を理由とする法律関係に適用上差異が生じるのは、通例のことであり、猶予期間をいつまでも長く設けることは、一般に不合理であるから、経過措置の期間が定められていることをもって、不合理な取扱いの差異ということはできないとされた事例(原審判決引用)

          (8) 相続財産である土地の評価に当たり財産評価基本通達4012(生産緑地の評価)に定める控除を認めないのは違法であるとの納税者らの主張が、同通達4012は生産緑地法上の行為制限が付されている生産緑地についてその利用制限にかんがみて評価減を行うこと、また、同通達4012は市町村に生産緑地の買収を求める場合であっても、一定の手続と時間が必要であるという特殊性を評価上考慮するために評価減するものであり、右取扱いを受けるためには、当該農地が相続開始時期において生産緑地の指定を受け、生産緑地法上の行為制限が付されていなければならないのであり、原告らが相続を受けた本件農地は相続時点で生産緑地の指定を受けていなかったのであるから、右取扱いの適用は認められないとして排斥された事例(原審判決引用)

          (9) 更正処分は、納税申告に係る課税標準等又は税額等を変更する処分であって(国税通則法24条)、申告期限までに納付すべき税額を変更する処分ではない上、更正処分を取り消し、更正処分に係る税額を変更するとしても、法律上当然に本件特例が適用され申告期限までに納付すべき税額が減額するという関係にもないのであるから、更正処分により変更された税額により不利益をうけていない納税者が、申告期限までに納付すべき税額が増額したとして本件更正処分等の取消しを求める法律上の利益があると解することはできないとされた事例

          (10) 相続財産である土地の評価にあたり、生産緑地地区に適合していることが指定告示により確認された農地については、生産緑地地区指定の申込時から生産緑地地区の農地として法的に取り扱われるべきであるとの納税者の主張が、生産緑地地区となるためには、都市計画において生産緑地地区と定められることを要し、右都市計画はこれを決定又は変更した旨の告示があった日からその効力を生ずるとして排斥された事例

【判決要旨】    (1)~(10) 省略

【掲載誌】     税務訴訟資料247号51頁